ハラハラ、ヤレヤレ・・・ スポーツの「非日常」空間が気分を和らげる

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   スポーツの有酸素運動がストレス解消によい影響を与えることを以前説明しましたが、それ以外にも「非日常」の体験がもたらす効果というものもあります。広島大学の荒井貞光先生が提唱する「スポーツ空間論」に基づいて説明してみましょう。

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日常に戻るまでの「ヤレヤレ感」も貴重

やってみると意外といいことが多い
やってみると意外といいことが多い

   たとえば何年ぶりかで、バレーボールやバスケットボールなどの「球技大会」に参加している場面をイメージしてみてください。体育館のコートの上では、普段は味わえないハラハラやドキドキを感じることができるでしょう。

   実際に、終業後や週末に同僚たちと野球やサッカーに興じている人たちもいるかもしれません。

   スポーツには運動そのものの効果のほかに、非日常の興奮が日常の雑事を忘れさせてくれる効果があります。

   また、スポーツを終えた後に、更衣室でその日のプレーを振り返ったり、世間話をしながらシャワーを浴びて着替え、帰宅前に仲間たちと喫茶店に立ち寄って談笑したりしながら「日常」に戻る――。そんな力の抜けた瞬間も貴重なのです。

   スポーツは、コート上のハラハラだけでなく、日常生活のイライラとの間に存在する「ヤレヤレ」とでもいう独特の時間と空間をもたらしてくれます。ここには、ストレスを和らげる効果が詰まっているといわれています。

   普段の生活とは異なる人間関係は、肩書きや立場を抜きにしたリラックスした空間を作り出してくれます。特に学生時代のチームメイトなどと一緒であれば、昔話に花が咲き、タイムスリップしたかのような経験もできます。

   メンバーが職場の同僚たちであれば、普段から顔を突き合わせている人たちに職場では見えなかった一面を見つけて、親近感が沸き、話題も増えて人間関係が良好になるかもしれません。

スタジアムでの「観戦」にも効果あり

   このようなスポーツがもたらす付随的な効果は、自分が運動をしていなくても味わうことができます。それは「観戦」という行為を通じてのことです。

   サッカースタジアムを何万人ものサポーターが埋め尽くすのは、スポーツがもたらす非日常のハラハラ、ドキドキを味わいたいがためです。

   また、スタジアムから日常に戻るまでの時間や空間の中で、スター選手の華麗なプレーなどについて話が盛り上がるでしょう。

   スポーツのよいところは、同じ時間や空間を共有することで、観客の間に一体感が生まれることです。同じチームを応援したサポーター同士が意気投合して、新しい人間関係ができるかもしれません。

   このように、スポーツというのは、無意識のうちにストレスを和らげる要素をたくさん持っているのです。猛暑の夏も終わり、スポーツの秋がやってきました。ストレスがたまってきたな、と思ったら、自らスポーツに参加したり、観戦したりする機会を作ってみてはどうでしょうか。


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今回の筆者:羽岡 健史(はおか・たけし) 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ所属。日本医師会認定産業医。メンタルヘルス不全者の職場復帰プログラムの開発とスポーツ精神医学が研究テーマ。浦和神経サナトリウムで精神科医として勤務するかたわら、茨城県庁とニチアスで産業医を務める。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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