皆さんは「ブレインフーズ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。脳を活性化させる食べ物のことで、集中力や意欲を高めたり、不安を抑え精神を安定させたりする効果が、ここ数年注目されています。
意欲や集中力を高める大豆製品
私たちの脳は、体重の2%程度の重さしかありません。しかし、その中には千数百億個ともいわれる膨大な神経細胞が存在し、さまざまな活動を司っています。
神経細胞は、シナプス(神経細胞どうしの接点)を介して神経の伝達をしており、その情報のやりとりをしているのが、ノルアドレナリンやセロトニン、アセチルコリンなどの「神経伝達物質」なのです。
ブレインフーズは、こうした神経伝達物質の素となる大切な食品を指します。代表的なブレインフーズには、大豆食品や乳製品があげられます。
たとえば大豆食品には、チロシンという栄養素が多く含まれており、意欲や集中力などに関係するノルアドレナリンやドパミンの分泌を高めてくれる作用があります。
また、アルツハイマー型認知症の患者さんには、脳の老化予防や記憶・認知機能向上に作用するアセチルコリンの働きをよくする治療薬を用いて症状の改善を図るのですが、大豆食品に含まれるレシチンという栄養素は、体内でこのアセチルコリンの生成に関わっています。
乳製品は精神の安定を司る
また、乳製品もブレインフーズのひとつで、セロトニンの原料となるトリプトファンという栄養素が多く含まれています。トリプトファンは必須アミノ酸で、体内では生成できないため、しっかりと食事で補う必要があるのです。
「トリプトファンの不足はうつ病再発に関与している」
との研究報告もあり、その重要性がおわかりいただけるかと思います。
セロトニンは、不安感の抑制や気分を調節する物質です。セロトニンや、大豆食品で分泌されるノルアドレナリンが過度に不足すると、不安や気分の落ち込み、意欲の低下などが生じ、うつ病になります。
また、これらの食品は、脳のエネルギー源となるブドウ糖と、代謝機能を正常に保つためのビタミンB群とともに摂取することで、その効果をアップさせます。特にビタミンB6は、トリプトファンから精神安定作用のあるセロトニンが生成される過程で必要となるブレインフーズの一種といえます。
このように、私たちの心身のバランスは、様々な栄養素や成分が互いに助け合い作用し合って保たれています。こころの健康を意識した食習慣を作っていくためには、ブレインフーズを含めたバランスのよい食事をすることが重要です。