私たちは日々の生活で、知らず知らずのうちにストレスを感じており、これをうまく解消していかないと心身双方の健康を害します。発散方法として「親しい友人や知人とお酒を飲むこと」を挙げる人も多いと思いますが、飲酒によるストレス発散に功罪両面があることに留意すべきです。
お酒は神経をリラックスさせる
アルコールには神経をリラックスさせる効果がありますし、饒舌になって冗談やグチを発散するカタルシス効果もあります。他人の話は聞きたくないという人には、ストレスかもしれませんが・・・。
昔から「酒は百薬の長」と言われますが、医学的にも適量のアルコールが心筋梗塞や脳血管障害の発症リスクを低下させることが明らかになっています。
「適量」とは、ちょっと足りないかもしれませんが、ビールで大瓶1本、日本酒では1合程度です。
心身の健康を保つために有効なアルコールも、過度になると肝硬変や認知症のリスクを高めることにつながるので注意が必要です。特に「アルコール依存症」は、自分でお酒をやめたいと思っていても止められない恐ろしい病気です。
依存症になると、たとえ翌日の早朝に重要な会議があって酒を控えなければならない状況であっても、飲まずにはいられない「精神依存」の症状が出たり、飲まないと不安が強くなり手が震えるなどの「身体依存」の症状が出たりします。
そして、満足するために必要な酒の量がどんどん増えて「耐性」がつき、趣味などに対する関心が低下し、お酒に固執するようになります。健康診断で肝硬変などを指摘されても、自分にとって悪いことだと分かっていて飲むことがやめられなくなります。
ときにはお酒抜きで悩み聞いて
さて、このようにメリットとデメリットのある飲酒ですが、よりよくお酒をたしなむためにはどうしたらよいでしょうか。基本的なことですが、週に2日程度は休肝日を作るようにすべきです。休肝日は連続してとる方がよいといわれています。
そうはいっても、接待などで飲まざるをえない人は、お酒と一緒に食べる「つまみ」に注意すると、身体への負担を軽くすることができます。
悪酔いを避けるためには「低脂肪、高たんぱくのつまみ」を選びましょう。肝臓の機能を向上させるためには、たんぱく質を摂取し、脂肪を抑えるとよいといわれています。鶏卵や、イカ、貝などの魚介類、豚肉などを選び、揚げ物は避けた方がよいでしょう。
また、「水分を多く含むつまみ」を選ぶこともポイントです。豆腐や野菜には水分が多く含まれ、アルコールの分解を促します。お酒自体が水分のように思えますが、アルコールには利尿作用があるので、脱水状態になりやすいのです。
アルコール依存症にならないよう、ストレス発散方法をお酒だけに頼らないように注意することも非常に重要です。お酒は比較的安価で手っ取り早く気分を変えてくれるものですが、「やけ酒」や「憂さ晴らし」に使うと飲みすぎになり、耐性がついてしまいます。
お酒は古くから人間関係の潤滑油にもなってきた素晴らしい嗜好品ですが、ストレスに対しては、もろ刃の剣でもあります。
上記の点について自分で気をつけることはもちろん、身近な人が「酒を飲んだら人が変わる」状態になってしまったときには、本人にアルコール依存症の治療を勧めたり、お酒を飲まないときにストレスの原因について話を聞いて、早めに解決に向かうよう協力してあげましょう。