食べるという行為には、副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があるということは、前々回でも述べました。今回は、食習慣とかかわりの深い「ダイエット」の効果的な方法について、詳しく述べてみます。
むやみな食事制限が招く「悪循環」
ダイエットは、かつては女性の美容の一環というイメージがありましたが、最近では男女問わず健康維持という側面が強まりました。体重増加や肥満が「メタボリック・シンドローム」の誘引となり、生活習慣病のリスクとなることが実証されたからです。
健康診断の後で、食事内容や生活リズムについて聞き取りされ、
「1日3食食べましょう」
「深夜の食事は控えましょう」
「大食いはせず、ゆっくり噛んで食べましょう」
などのアドバイスを受けた人もいるのではないでしょうか。
しかし、理屈では分かっていても、忙しい毎日の生活で理想の食習慣を実行するのは簡単ではありません。特にストレスの多いビジネスパーソンにとって、ダイエットとは単純に「意志の強さ」だけで達成できるものではありません。
というのも、ストレスはダイエットの大敵だからです。ストレスとなる出来事に遭遇すると、身体を守るために「コルチゾール」や「アドレナリン」といったホルモンが分泌されますが、これらのホルモンには食欲を刺激する作用があります。
また、食べるという行為には、副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があるので、ストレスを感じると、つい暴飲暴食をしがちなのです。これらは、ストレスに対する身体の自然な反応といえます。
この作用を逆に考えると、ダイエットのためにむやみに食事を制限することは、
「食べることを我慢する」→「心身が落ち着かない」→「ストレスが高まる」→「衝動的な食欲にさらされる」「不規則な食事を取る」
という悪循環に陥ることになりかねません。ダイエットを行うときには、この点を十分理解しておくことが必要だと思います。
体重減少に成功した「缶コーヒー半分」作戦
それでは、成功するダイエットとは、どうしたらできるものでしょうか。
まずは、自分の気分転換方法を持ってストレス軽減を図ることが早道ですが、ストレスを高めない形でカロリー摂取の抑制に成功した人もいます。
Aさんは営業で外出することが多く、休憩のたびに缶コーヒーを飲む習慣がありました。1日に3本程度、多い日には5本も飲んでいましたが、いつも利用する自動販売機には無糖コーヒーがなく、甘みのあるものしか選べません。
体重増加が気になったAさんは、健康診断で相談してみると、コーヒーの本数を半分にし、無糖コーヒーやお茶に変えることを勧められました。言うとおりにしてみると、しばらくして1カ月に1キロずつ体重が減り始めたそうです。
缶コーヒー1本で、角砂糖6~7個分の砂糖が入っているので、3本飲むと角砂糖およそ20個分の砂糖を摂取していたことになるのです。
あわせてAさんは、毎朝体重計に乗ることにしました。すると、飲み会の翌日には体重が増えているなど、生活と体重変動の関係が手に取るようにわかるので、
「昨日はだいぶ飲み食いし過ぎたから、今日のお昼は揚げ物をやめておこう」
と、自然に微調整を図れるようになったそうです。
目標を設定して実績を計測し、無理のない形で軌道修正をしていくこと。心身のマネジメントは、ビジネススキルに通じるところがあります。一発逆転を狙うのではなく、自分の身体や生活と向き合い、日常的にできることを重ねることが確実な道といえるでしょう。