ストレスを感じたとき、人はつい食べ過ぎてしまいます。なぜ、食べることでストレスが解消された気になってしまうのでしょうか。今回は、私たちの身体の中の「ストレス」と「食べ過ぎ」が結びつく仕組みについて説明します。
食べる行為にはストレスを癒す作用がある
ストレスとなる出来事に遭遇したとき、私たちの体内では、ストレスから身体を守るためにさまざまなホルモンが分泌されます。代表的なものは、腎臓の上に帽子のようにかぶさっている副腎から分泌される「コルチゾール」と「アドレナリン」です。
この2つのホルモンには、呼吸数を多くしたり心拍数や血圧、血糖を上げたり、炎症を抑えたりする作用があります。「緊張の神経」である交感神経を優位にし、ストレスと闘えるよう準備を整えているわけです。
このホルモンがうまく分泌されることで、仕事や運動に集中して能力を発揮することができます。その意味で、ストレスにさらされてホルモンが分泌されることは、必ずしも悪いことではありません。
しかし、ストレスと闘った後には、興奮をしずめ、傷ついた身体をいやさなければなりません。そのためには交感神経にかわって、「弛緩の神経」である副交感神経を働かせることが必要になります。
実は「食べる」という行為には、副交感神経を優位にする作用があるのです。また、コルチゾールやアドレナリンにも食欲を刺激する作用があります。したがって、ストレスにさらされると、つい大食いをしてしまうということが起こるのです。
焼肉やケーキで脳内麻薬「エンドルフィン」が出る
ストレスを感じたときとき、みなさんはどんな食べ物が欲しくなりますか。ほとんどの人は、野菜や果物などのヘルシーな食べ物よりも、焼肉やケーキなど脂肪や糖分が多く含まれる食べ物に手が伸びてしまうでしょう。
これは、焼肉やケーキなどを食べることで、それに含まれるオレイン酸やリノレン酸などの遊離脂肪酸が舌を刺激し、脳内麻薬の一種「エンドルフィン」を分泌させて満足感を得ようとするためと考えられています。
私たちの脳は、エンドルフィンが分泌される満足感が食べ物によって得られることを記憶してしまうので、ストレスにさらされたときに「焼肉食べたい!」「ケーキ食べたい!」と思ったり、一度食べ始めると習慣化してしまうという現象が起こるのです。
このメカニズムを考えると、ダイエットをするときに「食べる量をしっかり制限しよう」という方法では難しいのではないかと思います。食べたいものを我慢すると、それがストレスの元となり、食べ過ぎにつながってしまうという本末転倒を招くからです。
いろいろなダイエット方法に挫折した人は、「食べる量を制限する」発想を転換して、
「ストレスと上手に付き合っていこう」
という点に重点を置くと、うまくいくことがあるかもしれません。