皆さんは「5月病」という言葉を、一度は耳にされたことがあると思います。これは5月ころになると、なんとなく体がだるくなり、ボーッとしてヤル気が低下してしまう状態のことを指します。今回はこの5月病の正体に迫ってみたいと思います。
新年度に職場環境が変わった人は要注意
就職や職場内の配置転換など、新しい環境に置かれると、最初は全てのものが新鮮に映ります。そして、その環境に早く溶け込もうと、無意識のうちに無理を重ねてしまいがちです。この状態を心理学では「過剰適応」といいます。
まるで結婚したばかりの夫婦が、お互いの良いところばかりが目につき、更に相手に好かれようといつも以上の努力をする時期と似ていることから、「ハネムーン期」とも呼ばれています。
私たちの研究グループでは、
「宇宙飛行士の宇宙空間滞在中における精神心理面でのサポート」
を担当しておりますが、多くの難関をくぐり抜け選抜された宇宙飛行士ですら、初めて体験する宇宙空間ではワクワクした気持ちと共に、少なからず初期段階で過剰適応してしまいます。
そして、この過程でいつも以上に労力を使うので、やがて心身の疲労へとつながってしまうわけです。さらに時間が経つにつれて、新しい環境の問題点や嫌な部分を目にするようになり、決して良いことばかりではない現実も突きつけられてしまいます。この時期は、新婚夫婦が徐々にお互いの嫌なところが見えてくる時期になぞらえて「ショック期」とも呼ばれています。
実はこのショック期が、5月病を引き起こす正体なのです。4月は職場環境が大きく変わる時期。職場異動ともなれば「新しい職場で早く自分の力を認めてもらいたい」と仕事を積極的に引き受けるでしょうし、新入社員が入ってくれば「先輩らしいところを見せつけたい」といつも以上に張り切ってしまいます。過剰適応により心身の疲労が蓄積してしまう人が多いのも自然なことです。
ゴールデンウィークには十分な休養を取るべし
では、どのように5月病を切り抜ければよいのでしょうか。蓄積した疲労を解消するためには十分な休養をとることが必要ですが、4月に過剰な適応をしたあとにやってくるのが、ゴールデンウィークです。
この時点で、疲れを癒す十分な休養がとれればよいのですが、多くの方が、
「4月は満足に家族サービスが出来なかったから、ゴールデンウィークくらいは旅行に行こう」
「4月はストレスがたまったから、彼女と遠出しよう」
などと、渋滞や混雑の中、行楽地に出掛けていくのです。
そして、積もりに積もった疲労は、ゴールデンウィーク明けにピークを迎えます。本来であれば引き継ぎなども一通り終わって、本格的に仕事に取り組まなければならないこの時期に「身体がだるい」「意欲がわかない」という症状が出現してしまうのです。
つまり、この5月病を効果的に予防するには、これから迎えるゴールデンウィークで十分な休養をとることが必要となります。もちろん、どこにも出掛けるなということではありませんが、少なくとも数日は、十分な睡眠と、疲労を伴わない自分の趣味などに時間を費やしてみてはいかがでしょうか。