3人用ベンチのうち2人分の座席に、ポール型のコーンが固定され......。東京都新宿区内の西武新宿線・中井駅の南側にある広場で、こんな「意地悪ベンチ」があったとして、X上に写真が投稿され、関心を集めている。
一体何のために、座るためのベンチを座りにくくしているのだろうか。新宿区の担当課に取材して、詳しい事情を聞いた。
「夜間に飲酒や喫煙をして騒いでいると、住民から苦情があった」
ベンチの写真は、2024年7月14日にX上で投稿された。
その上に固定されたコーンは、車線分離標として使われるオレンジ色に白線が入ったポール型で、投稿者は、意地悪すぎるのではないかと指摘した。ベンチの後ろに、「夜間は会話を控えてください」と書いた地元町内会の立て看板が置いてあることから、住民からうるさいと新宿区にクレームが入ったのではないか、と推測していた。
コーン固定のベンチは、広場の同じ場所に2つ並んであった。立て看板の横には、「禁煙」と赤字で表示された区の看板もあった。
この投稿には、1万件以上の「いいね」が付いており、写真が拡散して話題になっている。
様々な意見が出ており、「え??なんのためのベンチ?」「もう撤去した方がマシ」との声も上がった。
ベンチのある広場は、山手通りの高架下にあり、新宿区の所有地になっている。
座りにくいベンチにしたのには、どんな事情があるのだろうか。
この点について、区の道路課は7月17日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「ベンチでは、飲酒や喫煙で利用している人たちがおり、夜間の騒音として住民から苦情がありました。高架下になっていることから、声がこもって周辺に響くようです。ベンチを撤去してほしいと要望があり、警察と連携して巡回してきました。しかし、騒音は減少していないといい、やむを得ず、暫定的にコーンを設置して部分的に制限しました」
コーン設置の効果については、「明確なことはまだ出ていません」
道路課によると、21年4月にコロナ禍の中で騒音に苦情があったことから、ベンチにロープなどを張って利用を中止した。同年8月にベンチに今回のコーンを3人分の座席すべてに設置したが、同年12月には、コーンをすべて撤去した。
ところが、また苦情が出るようになって、23年9月8日から、現在のように2人分の座席にコーンを設置している。1人分を残している理由については、「あくまで座っていただくためのベンチですので、座る個所を一部に残しました」と説明した。
夜中にどんな人たちが集まって騒ぐのかについては、分からないという。ホームレスは、広場周辺には確認されておらず、その対策を念頭に置いているわけではないとした。騒いだ後には、空き缶やタバコの吸い殻が散乱しており、区でも清掃対応をしているという。
コーン設置の効果については、「明確なことはまだ出ていません」と述べた。座りにくいといった苦情は、これまでに来ていないという。今後どうするかについては、地元町内会と話し合って決めたいとしている。
「夜間は会話を控えてください」との立て看板を立てた地元町内会の会長は7月17日、取材に対し、次のように話した。
「食べたり飲んだりしたゴミが残っていることがありますので、清掃美化のため、定期的に町内会でも掃除をしています。しかし、騒音のトラブルは、あまり聞いたことがなく、現在は平穏ではないかと思います。ホームレスの方は、見たことがありませんね。ローラースケートや楽器演奏などは禁じられており、そのためにもベンチにコーンが設置されているのだと思います。座るのに困ったという話も聞かないですし、設置を止めてほしいとは考えていません」
一方、今回のベンチについて、新宿区の吉住健一区長は16日、自らのXで、「現状では良くないと考えています」として、次のように投稿した。
「広場ができて以来、苦情が絶えない状況が続いていたので、現場も悩んだ末の暫定的な対応だと認識しています 有効な対応策を発案し指示を出せなかったのは私の責任です 現地の方々と相談しながら、今後のあり方をなるべく早く決めていきたいと考えています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
(続く)
— 吉住健一(新宿区長) (@yoshizumi_ken) July 16, 2024
広場ができて以来、苦情が絶えない状況が続いていたので、現場も悩んだ末の暫定的な対応だと認識しています
有効な対応策を発案し指示を出せなかったのは私の責任です
現地の方々と相談しながら、今後のあり方をなるべく早く決めていきたいと考えています