松山市内を走る観光列車「坊っちゃん列車」について、市がふるさと納税を使ったクラウドファンディングを行ったところ、目標の約1割しか寄付が集まらず、運行継続に黄信号が灯っている。
坊っちゃん列車は、メンテナンス費用などがかさみ、運行開始からの累積赤字が約14億円に上っている。今後の運行は、どうなってしまうのだろうか。
返礼品は「準備に時間がかかる」などと用意せず
坊っちゃん列車は、明治~昭和に市内で運行していた蒸気機関車をモデルにした。機関車は、夏目漱石の小説「坊っちやん」に登場することから、この愛称で親しまれている。
蒸気機関車は公園などで展示されており、復元された現在の列車は、石炭ではなくディーゼル燃料で走るレプリカだ。伊予鉄道が2001年から運行をスタートさせている。
ところが、赤字が1億円を超す年もあり、運転士不足もあって、23年11月から一時運休した。運転士を確保できるメドが立ったとして、24年3月に再開したものの、年間5000万円超の赤字が見込まれ存続が危ぶまれている。
そこで、松山市では、運行を支援するためのクラウドファンディングを2回に分けて行うことを決め、1回目が半分の2500万円を目標に3月20日から始まった。ふるさと納税の仕組みを使ってはいるものの、返礼品については、準備に時間がかかることなどから、用意しなかった。寄付はなかなか集まらず、6月17日の締め切りで、200人からの283万円強に留まった。半数以上は、市民だったという。
クラウドファンディングのため、市は、1068万円の予算を計上しており、見込んだコストの方が大幅に上回ってしまった形だ。これに対し、愛媛県の中村時広知事は17日の定例会見で、かなり予算が使われており、そのお金で補助する方法もあるのではないかと苦言を呈した。
そもそも、坊っちゃん列車を巡っては、本当に存続させる必要があるのかについて、様々な意見が出ていた。
運行継続は8割の市民が賛成、税金活用の是非は......
運行継続の危機を受けて、坊っちゃん列車の関係者らでつくる松山市の「坊っちゃん列車を考える会」が発足し、23年12月の初会合では、今後の運行を危惧する声が相次いだ。
伊予鉄道からは、1両当たり3人の運転士が必要で、3人いれば路面電車が3台走ると、人手不足の現状が説明された。そして、今後も継続するのは会社の経営判断として困難だと明かされ、市が観光コンテンツとして運営してほしいとの要望が出された。
出席者からは、減便された電車やバスの方をむしろ何とかすべきだ、赤字が大きいと支援も限界がある、といった否定的な意見も出て、「1~2年の赤字解消ではなく、持続可能な事業になるかを根本的に考えないといけない」などと今後の対応を取りまとめた。
松山市では、市の公式LINE登録者を対象にしたアンケートも23年12月から行い、約8割が「運行を再開した方がいい」と答えた。しかし、市が税金を活用すべきかについては、賛成は約2割に留まり、「一部のみ」が5割近くを占めた。税金活用に反対したり、再開を望んだりしない意見も、それぞれ15%前後もいた。
低調なクラウドファンディングの結果を受け、坊っちゃん列車はいずれ廃止されてしまうのだろうか。
市の観光・国際交流課は6月19日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「そういったことも含めて検討するために、今回行っています。しかし、観光の目玉と考えており、あくまでも運行継続の可能性を探っていくのが前提です。人気がないかどうかの評価は難しいですね。乗車人数が限られた特殊な車両ですので、人気がないとは一概に言えないと思います」
なぜクラウドファンディングが目標の約1割に留まったかについては、「分析・評価していませんので、回答を持ち合わせていません」とした。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)