ペットサロンに預けたシェパード犬が死亡したのは、経営者の過剰な「しつけ」による虐待があったためだと、飼い主がメディアやSNSを通じて訴えている。
これに対し、経営者は、死亡したのは事故だとサロンの公式サイトで述べ、起きたことを謝罪した。サロンのある福岡県北九州市では、報道を受けて事実関係の調査に乗り出した。
シャンプー中に犬が暴れたと説明
飼い主の20代男性は、2021年1月28日放送の日テレ系情報番組「スッキリ」のインタビューに応じ、生後10か月で飼い犬が亡くなった経緯を説明した。
今回の件を訴えているインスタグラムの投稿や、番組インタビューに本人が話したところによると、飼い主は出張が多いことから、20年6月から、犬のしつけを兼ねて週に2、3回サロンに預けた。
ところが、21年1月12日、サロンから飼い犬が死にそうだと電話があり、病院に駆けつけると、すでに死亡していた。経営者にその経緯を聞くと、経営者は、シャンプー中に犬が暴れたのでしつけをしたと説明し、事故だったとして謝罪してきたという。
しかし、飼い主は、こうした説明に納得がいかず、当時店にいた経営者運営の動物専門学校の生徒2人に後で聞くと、生徒らは、経営者による虐待があったと明かした。
番組のインタビューには、サロンの従業員も応じ、当時の状況を明かしている。
その証言によると、飼い犬は、ドッグランで遊んで泥だらけになり、この従業員と生徒2人の計3人でシャンプーを始めた。そこに経営者が来て、「しつけ」だとして、犬の首輪を直接シンクの手すりにつなぐよう指示し、犬が嫌がって首輪を抜くと、押さえ付けて再びつなぎ、頭から水をかけることを繰り返しさせたという。犬は、窒息したように一瞬気を失い、自力で立てなくなった。
サロンが関係する協会は「厳粛に対応する」
死亡した犬のシャンプーは、通常は30~40分しかかからないところ、2時間ほどもかけていたという。
30~40分経っても回復せず、動物病院に連れて行くと、犬は口の中のものを吐いた。病院が心肺蘇生を試みたが、息を吹き返さなかったという。従業員は、「守ってあげられなくて申し訳ない」と涙声になっていた。
飼い主が獣医に犬の解剖に出して毛を剃ってもらったところ、足の甲や脇に打撲の跡のような青あざができていたともいう。
この飼い主のものとみられるツイッターやインスタグラムのアカウントも開設され、同様な状況を報告している。動物愛護関係者らによるツイートも拡散し、ペットサロン経営者への疑問や批判が次々に書き込まれている。
これに対し、経営者は、サロンや動物専門学校のサイトで、預かった犬が亡くなる事故が起きたことを認め、謝罪した。飼い主とは、弁護士と相談しながら、誠意を持って対応するとしている。また、一部のSNSなどでは事実と異なる内容が拡散されているとも訴えている。
北九州市動物愛護センターは1月28日、J-CASTニュースの取材にこう答えた。
「このサロンは、市の動物取扱業に登録しています。飼い主から苦情は受けていませんが、報道を受けて、サロン側に事実確認をしています。警察が動いているかどうかは分からないです」
このサロンを巡っては、2か月前に小型犬についての苦情がセンターに寄せられ、この件も事実確認している。
経営者運営の動物専門学校は、トリマーなどのライセンスを発行している全日本動物専門教育協会にも加盟しており、同協会は28日、事実関係を調査し、厳粛に対応するとした理事長名の声明をサイトに出した。同協会の事務局長は、「こうした事態になったことに困惑しており、理事会に諮って処分せざるを得ないと思っています」と取材に答えた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)