本数も少なめ、両数の短さも弱点
もっとも鉄道の方も「飽和状態」に近づいている。特にJR西日本の嵯峨野線と奈良線は、それぞれ嵐山・伏見稲荷・宇治へアクセスできるために近年観光客が急増し、終日ラッシュ並みの混雑が発生。JR京都駅で入場規制が行われることもある。両線とも元々1時間当たり5~6本と本数は少ない上に、両数が短い(4~6両)という弱点があるために、快速列車の臨時停車やハイシーズンの増発でしのいでいる状況だ。JRだけでなく、京都の鉄道路線のキャパシティの低さもオーバーツーリズムの影響を受けている。京都市営地下鉄は烏丸線・東西線ともに6両編成、嵐電と叡山電鉄は路面電車サイズの小型な車両が1~2両編成なので、積み残しもしばしば発生している。
公共交通が悲鳴を上げ、どこに向かうにも「ディズニーランド並み」と揶揄される秋の京都だが、「観光公害」を回避する特効薬は乏しい。もはや春と秋のハイシーズンには「京都に来るな」と経験者や地元民から言われるほどで、現状では、徒歩・レンタサイクルなどで旅行者が知恵を凝らすしかない。
なお京都市の月ごとの年間観光客は、京都市産業観光局作成の「京都観光総合調査」によれば、2017年を例にとると最多は3月の543万2000人で、最少は9月の372万9000人だった。次いで観光客が少ない月は7月(381万5000人)と8月(406万8000人)で、意外にも夏休み期間の7~9月が少ない傾向を示したが、これは旅行者が夏の暑さを避けたためと考えられる。過ごしやすい春と秋に観光客が集中し、暑さ寒さの厳しい季節がオフシーズンという単純な傾向になったが、過酷な気候とストレスの多い混雑のどちらを取るか、という苦しい選択をしなければ、京都観光は楽しめないのが現状だろうか。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)