韓国小説『82年生まれ、キム・ジヨン』が、日本でも大ヒットした理由

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   韓国の駆逐艦によるレーダー照射問題で、「制裁が必要だ」との強硬論も飛び出し、緊張が高まる日韓関係にあって、韓国の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)が日本でも2018年12月の発売以来、5万部が売れる大ヒットとなり、話題になっている。

   通常1万部売れれば、文芸書としてはヒットと言われる中で、なぜ支持されているのか。K-POPスターの「少女時代」スヨンらもネットで支持しているのも、理由の一つのようだ。

  • 日本でも人気を呼んでいる『82年生まれ、キム・ジヨン』
    日本でも人気を呼んでいる『82年生まれ、キム・ジヨン』
  • 日本でも人気を呼んでいる『82年生まれ、キム・ジヨン』

「#MeToo」手伝いベストセラー

   『82年生まれ、キム・ジヨン』は、韓国で2016年に発行されるや、男尊女卑の気風がいまも残る韓国社会の影を描いた作品として、100万部を超すベストセラーとなった。

   33歳の女性主人公キム・ジヨンの幼少期、学校、受験、就職、会社、出産などさまざまな場面で女性だから直面した差別や困難を、これまでかとばかりに描いたことが女性読者の支持を集めたようだ。

   17年には男性国会議員が300冊購入してプレゼントしたり、別の議員が文在寅大統領に「82年生まれ、キム・ジヨンを抱きしめてください」という言葉とともに贈呈したりしたことが報じられてブームに火がつき、社会現象になった。

   折しもアメリカ発の「#MeToo運動」が韓国にも波及し、検察、芸能、政界など韓国社会のあらゆる分野に火が着いたという状況で、同書が女性の人権向上というメッセージを強く発したことも手伝った。

「少女時代」スヨンらもネットで支持

   とは言え、韓国の小説は日本の市場ではきわめてマイナーな存在だ。版元の筑摩書房はK-POPのガールズユニット、RedVelvetのアイリーンがこの本を読んだと発言したことや「少女時代」のスヨンが「女性という理由で受けてきた不平等なことが思い出され、ショックを受けた気分だった」とネットでコメントを出したことが、日本のファンを通じて影響しているのでは、と見ている。

   紀伊国屋書店新宿本店では500冊を売上げ、青山ブックセンター本店、丸善丸の内本店など、東京都内の主要書店の文芸書ランキング1位に入り、22日(2018年1月)現在、5刷、5万7000部と急伸している。

   このため、日本の読者にも応えようと、著者のチョ・ナムジュンさんが2月19日に来日し、芥川賞作家・川上未映子さんと対談するトークイベントが紀伊国屋ホールで開催されることになった。

   学校や就職という人生の重大な局面にあって、女性がハンデを負うのは韓国も日本も変わらないという共通点が日本の読者の琴線にもふれるようだ。

   政治・外交の緊張をよそに、文学の「韓流ブーム」になるか、関係者は注目している。

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