「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏の死から、2週間が経った。民放のワイドショーはもちろん、天下のNHKさえ連日このニュースを伝え続ける中、その「謎解き」は堂々巡り、なかなか真相に辿り着く気配を見せない。
いったい、この怪死のポイントはどこにあるのか。真相究明には「3つの謎」と、その背景にある「4つの疑問」の解明が不可欠だ。
「カチカチ」遺体は不自然か
【謎(1)覚醒剤をなぜ、どうやって口に入れた?】
野崎さんの死因が、口から摂取された覚醒剤であることはまず間違いない。
本人は著書の中でサプリメントは「数種類愛飲」しているとする一方、「覚醒剤ともまったくご縁はありません」。注射の痕跡も見つかっておらず、「常用」していた可能性は薄いとされる。
そんな野崎さんが、なぜ、どのようにして致死量の覚醒剤を口に入れたのか。
本人の意思とすれば、一般的な「注射」や「炙り」ではなかったのはなぜか、という疑問が残るし、もし第三者の関与があったとすれば、どのように飲ませたのか、という問題がある。覚醒剤は苦味が強いとされ、それをごまかせるビールなどへの混入、あるいはカプセルなどに詰めてサプリメントなどと偽る、などの手段が指摘されている。
【謎(2)「物音」と遺体発見時の状況】
野崎さんの遺体が発見されたのは夜22時過ぎだ。
現場に居合わせた家政婦は、各メディアの取材に「20時ごろ(のちに21時ごろと改めている)」、2階の野崎さんの部屋から物音がし、その後22時過ぎに妻が2階に上がったところ、椅子に半裸で腰かけて死亡している野崎さんを発見した。
死亡推定時刻は21時ごろ。「物音」との関係が想定される。
しかし、覚醒剤中毒で亡くなったにもかかわらず、「椅子に座った」ままだったことには、疑問を呈する向きが多い。また、家政婦は遺体が「カチカチ」だったとしたが、それほどに死後硬直が進むには4時間はかかる、というのがもっぱらの見方だ。遺体発見をめぐる状況には謎が多い。
【謎(3)愛犬の死】
野崎さんは犬の「イブ」を溺愛していた。自らの死後には、イブの面倒を見てくれる人に遺産を譲る、との意向も示していたという。
そのイブは、野崎さん怪死の直前、6日に絶命した。すでに高齢ではあったが、突如もがき苦しんで――という異例の死にざまである。その症状は、覚醒剤を摂取した場合に近い、とも指摘されており、6月7日には警察が死体を掘り起し、検証を開始した。
野崎さんは愛犬の死以降、非常に憔悴していたとの証言がある。一方で、派手な葬儀を営もうと計画、精力的に動いていたともされる。死の原因、そして野崎さんへの影響など、愛犬をめぐる「謎」は事件解決の重要なカギと見られている。
妻と「空港で出会った」の真偽は
【疑問(1)死の直前の様子】
死の直前の野崎さんについては、普段と変わらなかった、との声もある一方で、死の4日前に会った知人はろれつが回らず、脂汗を流すなど、異常な様子だったと指摘する。
また、親交のあった「週刊現代」記者は、死の前日、そして当日の16時ごろ「会って話したい」と切羽詰まった様子の電話を受けたとつづっている。遺体発見の6時間前だ。なんらかのトラブル、あるいは死を予見していたとも取れる。
【疑問(2)妻の言動】
55歳年下、22歳の妻とは、2月に結婚したばかりだった。著書では、空港で転んだところを助けられたのがなれそめ、と語っていたが、6月7日発売の「週刊文春」「週刊新潮」はそろって、知人男性経由の紹介だったとしている。
その妻は、葬儀の席でスマートフォンをいじるなどしていた、などといった振る舞いがたびたび報じられている。また、予定されていた挙式が中止となり、野崎さんとも4月に入ってようやく同居したとされるなど、2人の仲の実際は憶測が飛び交う状況だ。メディアに対しても、一貫して沈黙を貫いている。
【疑問(3)家政婦の証言】
妻とともに遺体を発見した家政婦の女性は、以前からの野崎さんの知人で、17年から野崎家で働くようになったという。事件発覚以来、メディアに積極的に登場し、多くの情報を提供している。
一方、謎(2)にもあるとおり、「物音」の時刻など、途中でひるがえした証言も。事件に関して積極的に発言している元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏も、テレビ番組でその発言に違和感を表明している。
【疑問(4)覚醒剤の入手ルート】
事件の舞台となった和歌山県田辺市は人口7万人余りの小都市、違法薬物を購入するのは困難と指摘される。覚醒剤を入手可能な人物自体、かなり限られてくる。
前述の家政婦は、元交際相手が所持していた品、との見方を示し、野崎さんの部屋の引き出しから覚醒剤が出てきた、と説明している。ただ、「週刊文春」などでは、部屋からの覚醒剤発見という事実そのものに否定的な関係者の談話を掲載している。