外食は値上げ、小売は値下げ 「正反対の対応」のワケ

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   外食業界で値上げが広がる一方、スーパーなどの小売業界では値下げの動きが続いている。この夏から冬にかけ、小売大手のイオンをはじめ、西友やダイエー、家具チェーンのイケア・ジャパンが相次いで値下げに踏み切っている。小売企業が値下げの手を緩めないのはなぜか。

   西友は2017年11月中旬、食品や日用品など644品目を1~6か月間、平均3~9%値下げすると発表した。「2017年最後のプライスキャンペーン第4弾」とPRし、顧客の取り込みを図る。

  • 小売企業は値下げの手を緩めない(画像はイメージ)
    小売企業は値下げの手を緩めない(画像はイメージ)
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「節約志向は続いている」

   イオンも今夏、プライベートブランド(PB)の食品や日用品114品目を平均約10%値下げし、ダイエーも10月に15品目を値下げした。イケアも今夏、約890品目を平均22%値下げし、今後も順次、品目を増やしていく方針だ。

   西友によれば、11月に全国で567人を対象に行った調査の結果、回答者の8割以上が「節約したい」と考えていることが分かったといい、「節約志向は続いている」と値下げの理由を説明する。イオンも「消費者の低価格意識は強く、顧客のニーズを見て判断した」と主張。いずれも商品の値ごろ感を打ち出して、需要を喚起しようと狙う。

   しかし、その一方で外食業界では値上げが目立ってきている。大手居酒屋チェーンの鳥貴族が10月から、それまで税別で280円均一としていた食べ物やドリンクなどのメニュー価格を298円に値上げした。すかいらーくも一部メニューの値上げに踏み切っている。

人手不足で人件費上昇

   外食企業が値上げを決意した大きな理由は、人手不足を背景に、アルバイトやパートの時給が上がるなど、人件費が上昇していることだ。鳥貴族は、注文システムの改善など業務の効率化を進めているが、「人件費の増加に歯止めがかからない」と説明する。

   人件費の負担に苦しんでいるのは小売企業も同じだが、思い切った値上げにはカジを切れない。業界に詳しいある研究者は「小売企業は利益を追求するというより、同業者との競争に勝つことが最優先なのではないか」と指摘する。実際、値下げを行うことで一時的に客数が増えても、結果的に利益を圧迫する要因になりかねないとの見方は強い。株式市場では、外食企業が値上げを発表すると株価が上がるのに、小売り企業が値下げを発表すると株価が下がるという傾向もみられる。

   消費者の節約心理は大きいと言えようが、「目先の客数増しか考えず、理由のない値下げがまかり通るのは理解できない」と話す市場関係者も少なくない。

   総務省が発表した9月の全国消費者物価指数は、値動きの激しい生鮮食品を除くと100.3で、前年同月と比べて0.7%上昇し、9か月連続のプラスとなっている。デフレ脱却までの道のりは依然不透明だが、やや変化が現れつつあるのも事実だ。こうした中、小売り企業の値下げはどこまで続くのか、デフレとの動向も絡み、関心が集まっている。

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