「『イシグロ氏が受賞したんだ。すごい人なんだなあ』って感想なら分かるけど...」
イシグロ氏は1954年の長崎市生まれで、親の英国転勤にともない5歳で渡英。1982年に英国籍を取得した。1989年発表の『日の名残り』では、英国の文学賞「ブッカー賞」を受賞している。今回、「NEWS23」(TBS系)は10月5日、イシグロ氏が著した小説『わたしを離さないで』を綾瀬はるかさん主演で16年にテレビドラマ化した際の同氏へのインタビュー映像を放送した。質問にイシグロ氏は英語で答えている。
こうした点から、ツイッターでは
「イシグロ氏ってイギリス人なんだから、日本の誇りとか言うのは違うだろ...」
「カズオ・イシグロがノーベル賞受賞したのがどうして『日本人として誇らしい』という話になるのか?」
「『イシグロ氏が受賞したんだ。すごい人なんだなあ』って感想なら分かるけど、『同じ日本人として誇らしい』となると『は?』って気分になる」
「カズオ・イシグロは日系ではあるけど、れっきとした英国人作家だからね...なんでもかんでも日本人で誇らしいとかの道具やめて」
といった声が徐々に増すことになった。これを受けてさらに「日本と少なからず縁のある作家がノーベル賞を受賞したってことを、『へぇ、すごい。ちょっと誇らしいね』と思うくらいは別におかしなことではないと思うんだが」と諫めるような投稿もみられる。
イシグロ氏自身の日本に対する思いは、5日の受賞決定後に受けた報道陣の取材の中で垣間見える。この模様は「報道ステーション」(テレビ朝日系)などで中継された。
「私は英国育ちだが、物の見方、世界観、芸術的観点には日本が影響している。両親は日本人で、家で日本語を話していた。私は親の目を通して世界を見ていた。私の体の一部は日本人だと思っている」
また、前出「NEWS23」では2011年のインタビュー映像が放送された。この中でイシグロ氏は生い立ちについて語っている。
「私という人間が、どの部分が日本から来て、どの部分が英国から来たか、分析するのは難しい。しかし、日本の要素が非常に重要で根源的なのは間違いない。5歳のときに日本を離れたが、大人になるまで、日本に戻ると思いながら育った。両親は日本的な価値観を持っていて、家の中で私を日本流の仕方で育てようとしていた。西洋的な育ち方ではなかった。そうした価値観の多くが私の一部となっている」