訪日外国人の増勢は衰えを知らないようだ。2017年上半期(1~6月)に日本を訪れた外国人旅行者数は過去最多を記録するなど、増え続けている。一方、滞在中の医療費を未払いのまま帰国してしまう外国人が増えるなど、新たなトラブルも顕在化。政府は、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に訪日外国人を4000万人まで増やす目標を掲げているが、課題が次々と浮上しているのが現実だ。
「施設内も通りも銀座はとにかく外国人であふれかえっている。昔の銀座を思い描き、ちょっとセレブ感を味わいたかったが、観光名所に来たような気分になった」。夏休みを利用し、東京都中央区銀座にこの春オープンした新名所「GINZA SIX(ギンザシックス)」を家族で訪れたという都内在住の50代の男性は、ややうんざりした表情でこう話す。
消費金額、上半期として初めて2兆円を突破
都心のメインストリートや繁華街は、どこもリュックを背負ったり、トランクを引いたりする外国人でいっぱいだ。それもそのはずで、観光庁によれば、2017年上半期の訪日外国人数は前年同期比17.4%増の1375万人と過去最多を更新した。7月も前年比16.8%増の268万人と月間で過去最高を記録、とどまることを知らない勢いで伸び続けている。
訪日外国人が消費した金額も上半期で同8.6%増の2兆456億円と、上半期として初めて2兆円を突破。訪日外国人は経済的にも日本を潤す貴重な存在になっている。だが、同時にさまざまな問題も浮上している。
沖縄県宮古島市のビーチで、レジャー用品の貸し出し業者が中国人だけにビーチパラソルのレンタル代金を10倍に設定し、「差別ではないか」と問題になったが、中国人に絡むトラブルは少なくない。この業者は「中国人のマナーに問題があった」と釈明したが、首都圏にある外国人に人気の某観光施設では、関係者が「中国人はゴミを平気で捨てたりするので、掃除に通常の2倍以上のコストがかかる」とため息をもらす。マナーや文化の違いがさまざまなトラブルを招いているのが実態だ。
騒音やゴミ出しなどを巡るトラブル多発
一方、最近じわじわ広がっているのが、外国人による医療費の未払い問題。訪日外国人の約3割は旅行保険に加入しないまま入国しているとされる。このため、病気やけがで病院にかかった場合、全額自己負担となり、「請求される医療費はかなりの高額に膨らむため、支払わないまま出国してしまうケースが珍しくないようだ」(旅行業界関係者)という。厚生労働省は医療費未払いの実態調査に乗り出し、解決策を探る方針だ。
2016年の訪日外国人旅行者数は約2404万人。政府目標の4000万人まで増やす場合、避けられないのが宿泊施設の不足という課題だ。既存のホテルや旅館ではとうてい受け入れが困難なため、民泊を受け皿にしようと、さまざまな制度が動き出している。だが、すでに民泊を行っているケースでは、外国人による騒音やゴミ出しなどを巡るトラブルが多発しており、民泊を広げるのも容易ではない。
都内では、「一時停止」に「STOP」、「徐行」に「SLOW」と英語を併記した道路標識の設置が始まるなど、訪日外国人対応の動きは進んでいるものの、課題は多岐にわたり、政府や自治体の早急な対応が求められる。