韓国・釜山の日本総領事館前の路上に市民団体が従軍慰安婦をモチーフにした少女像を設置した問題で、一時帰国している長嶺安政駐韓大使、森本康敬釜山総領事は2017年1月10日、首相官邸に安倍晋三首相や菅義偉官房長官を訪れて現地の様子を報告した。
安倍首相は、慰安婦像の撤去を含めた日韓合意の履行が「国の信用の問題」だと韓国側に対して強い態度で臨むが、韓国メディアは「むしろ市民の慰安婦像への訪問は大きく増えた」と報じるなど、慰安婦問題をめぐる対日感情は悪化の一途をたどっている。像設置から1週間以上が経過した1月8日夕方時点でも数十人が像の周りに集まっていた。朴槿恵(パク・クネ)政権が「死に体」となった以上、韓国の行政が当面、慰安婦像撤去に乗り出すことは考えにくく、日韓関係は泥沼状態に陥っている。
釜山市民「韓国政府がみすぼらしい」
大使と総領事の一時帰国は慰安婦像設置に対する日本側の対抗措置の一環。安倍晋三首相は1月8日朝放送の「日曜討論」(NHK)で15年末の日韓合意に基づいて日本がすでに10億円を拠出したことに触れながら、
「次は韓国がしっかりと誠意を示して頂かなければならないと思っている。それはたとえ政権が代わろうとも、それを実行するのが国の、言わば信用の問題だろうと思う」
と述べ、改めて慰安婦像の撤去を求めた。
この発言は韓国でも大きく報じられた。民放のMBCテレビは同日の慰安婦像前からのレポートで、「むしろ市民の訪問が大きく増えた」と伝え、訪れた中年女性は
「韓国政府がこのようにみすぼらしく見えたことはない。今回の件について、より強力な意思表現をしてくれたらいい」
などと韓国政府の弱腰の対応を批判。市民団体は24時間体制でパトロールを始めたといい、メンバーは
「最後まで何があっても少女像を守るつもり」
と話していた。