住友商事は2015年3月期の連結純損益が850億円の赤字になる。3月25日に業績予想の修正を発表した。
資源分野の損失がさらに拡大したのが主因で、赤字は実に16年ぶり。資源で苦戦する構図は他の大手商社も同じだが、「目利き力」の差で、住商の損失が突出して大きくなった。非資源に注力して復活を遂げられるか。名門商社の底力が試されそうだ。
シェールオイル失敗で2000億円損失
「住商ショック」が、株式市場を襲ったのは昨年9月末。米国でのシェールオイル開発失敗などで2400億円の巨額損失を明らかにし、発表翌日に住商株は12%暴落した。この時点では、2015年3月期通期の純利益は100億円と、ギリギリ黒字を予想していた。しかし、その後も石油や鉄鉱石の価格がさらに下落したため、850億円の追加損失の計上を迫られた。
米テキサス州などのシェールオイル・ガス開発関連での損失は、300億円増え2000億円に。ブラジルの鉄鉱石関連は150億円膨らんで650億円になる。さらに、米ペンシルバニア州のシェールガスや北海油田事業などで新たに400億円の損失を出す。
中村邦晴社長は記者会見で「資源のリスクを十分理解するだけの経験が足りなかった」と総括した。中村社長は経営責任をとり、役員報酬を4月から半年間、3割カット。資源や財務担当の役員も同期間、それぞれ1割減らす。
「第2のショック」は免れた
住商は資源開発で後発組だ。2000年代に入り、資源で先行する三井物産、三菱商事に追いつこうと、投資を積極化させてきた。中国など新興国の経済成長に合わせ、資源価格も高騰し、巨額の利益を生み出した時期もあった。ところが世界経済の減速と歩調を合わせるかのように、資源価格も急落。これまでの巨額投資が重荷となり、採算割れの事業が相次いだ。
他の商社も一様に資源からみで損失計上を余儀なくされている。例えば丸紅は北海油田事業で600億円、米シェール関連などで350億円など、資源関連だけで1000億円超の損失を計上。それでも1100億円の純利益を確保する見込みだ。三井物産や三菱商事も資源で苦戦する構図は変わらないが、それぞれ3200億円、4000億円の純利益を上げる見通し。資源分野での蓄積の差が出た格好だ。
資源分野で大やけどを負った住商は、当面、進行中の案件で利益を上げることを優先し、新規投資を抑制する方針。市況分析や技術評価力を高めるため、専門組織を立ち上げ、リスク管理を強化する。外部人材も積極的に登用する考えだ。
「損失計上を見込むビジネス以外は概ね堅調」との認識で、2016年3月期は純利益2300億円と「V字回復」を計画。資源・エネルギー価格が足元の水準で推移するとしても、2018年3月期には3000億円の純利益が達成可能とみる。
赤字見通しを発表した翌日の株価は、0.5%の下落にとどまり、「第2のショック」にはならなかった。ただ、マダガスカルのニッケル事業やチリの銅事業など現在進行中の大型案件も、決して安泰とは言えない。さらなる損失リスクがくすぶる中、計画通り収益を上げられるのかが問われることになる。