旅客船沈没、トラウマから抜け出せない 事故相次ぐ韓国、いまだに「服喪」続く

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   韓国では、死者・行方不明者304人を出した旅客船「セウォル号」の沈没後も、地下鉄の衝突や高齢者病院の火災と大勢の犠牲者を伴う重大事故が1か月ほどの間に立て続けに起きた。

   経済最優先で安全が軽視されてきた風潮に市民は怒り、社会に対する不安を抱える。事故のショックは今も尾を引き、各所で自粛ムードが続いている。

「つらい事実が、私たちの頭から消えることはありません」

ソウルもまだ自粛ムードのようだ
ソウルもまだ自粛ムードのようだ

   セウォル号の事故では、乗客を見捨てて真っ先に逃げ出した船長が殺人罪で起訴され、船会社の実質オーナーは指名手配、救助活動に不手際があったとして海洋警察は解体が決まり、朴槿恵大統領は「涙の謝罪」に追い込まれた。だがその後も地下鉄事故や火災が続き、韓国社会には動揺が残る。

   韓国の主要紙・中央日報電子版(日本語)は2014年5月29日付の社説で、28日に南西部・全羅南道の高齢者向け医療施設で発生した火災を取り上げ、「どこにも安全な場所がない」という見出しを付けた。21人の死者を出したが、この施設はスプリンクラーの設置義務の対象外だったという。さらにセウォル号事故の後、施設側と行政による安全点検が行われたが「異常なし」と判定されていたと明らかにした。社説では、7人が犠牲となったソウル近郊・高陽(コヤン)のバスターミナルビルの火災、また大きな被害はなかったがソウルの地下鉄駅で放火が起きたことにも触れ、「今は安心できる場所がどこにあるのか不安感が先走るばかりだ」と指摘した。

   朝鮮日報電子版(日本語)も5月30日付の記事で、相次ぐ事故の不安から「防災グッズ販売が急増」と書いた。市民がこれほどまでに神経質になっているのは、フェリー沈没や、ソウルを流れる漢江に架かる「聖水大橋」崩落、さらに百貨店ビルが突如崩壊した1993~95年以来だという大学教授のコメントを引用している。

   「韓国社会全体が、セウォル号事故のトラウマからいまだに抜け出せないでいます」と話すのは、ソウル在住の韓国人女性ジャーナリストだ。既に40日以上が経過したが、行方不明者の捜索は今も続いている。転覆した船体が無残な姿をさらし続けているのも人々の心をえぐる。「自分たちの目の前で起きた悲劇に何もできなかったというつらい事実が、私たちの頭から消えることはありません」。

姉妹サイト