日本の携帯電話が、独自の進化を遂げるあまりにグローバル市場で苦戦する様子は、「ガラパゴス化」と表現される。最近では、社会制度など世界標準からかけ離れた日本に警鐘を鳴らす意味で使われることもある。
語源は、南米エクアドルのガラパゴス諸島、南米大陸から約900キロ西にある太平洋上の島々だ。遠く日本でマイナスイメージをもって語られている現状を、エクアドルの人は不快に思っているという話もある。本当のところはどうなのか。
日本のガラケーは店に並んでいない
ガラパゴス諸島は、大陸から離れて形成された火山島のため、独特な生態系が築かれた。ウミイグアナやガラパゴスゾウガメをはじめ、固有種が多く生息する。19世紀にチャールズ・ダーウィンが立ち寄り、後の「進化論」のヒントを得た場所としても知られている。1978年には、ユネスコの世界遺産に「第1号」として登録された。
人類にとって貴重な島々だが、日本では近年、専ら「世界化に乗り遅れた携帯電話」の代名詞になってしまった。日本向けの機能に固執するあまり、グローバル市場では海外メーカーの製品に太刀打ちできない――。最近では、利用者が急増しているスマートフォン(多機能携帯電話)に対して、「ガラパゴス携帯」「ガラケー」と揶揄するように使われる始末だ。
実際に、米ガートナーが2011年2月9日に発表した2010年の世界の携帯電話販売台数ランキングを見ると、ノキアやサムスン電子、「アイフォーン」が大ヒットしている米アップルが上位に名を連ねる一方、日本メーカーはトップ10に1社も入っていない。
11年2月16日付の朝日新聞のコラムでは、同紙の山中季広氏がガラパゴス諸島を訪れ、日本で「ガラパゴス」という言葉がどう使われているかを現地の人に説明し、感想を求めた様子が描かれている。自分たちの住む島がネガティブに語られていることに誰もが表情を曇らせ、中でもガラパゴス市長は「そんな否定的な意味で使うのは看過できない」とおかんむりだった様子だ。
そのガラパゴスでも、日本の携帯電話は存在感が薄かったようで、店に並ぶのは海外製品ばかりだったという。「ガラケー」の語源となった場所で、改めてグローバル市場での競争力の弱さを露呈していた。
「適切な言い回しだと思います」
エクアドルの人たちは、やはり「ガラパゴス化」という言葉に怒りを感じているのか。エクアドルの首都キトにある新聞「エル・コメルシオ」のアンドレア・ロドリゲス記者はJ-CASTニュースの取材に対して、「ガラパゴス化、という言葉は知らなかった」としたうえで、日本の携帯電話事情を表現する意味で使われていることは興味深いと「意外」な反応を見せた。
さらにロドリゲス記者は、「日本のテクノロジーは素晴らしく、当地でも評価されています」とこたえる。一方、携帯電話は「ノキアとサムスンの人気が高い」と話した。
また、エクアドル出身のある女性によると、日本での「ガラパゴス化」の使い方について、
「エクアドル人にとって、さほどネガティブな印象を感じるものではなく、適切な言い回しだと思います」
と言う。生物が独特の進化を遂げ、他の場所とは違うユニークな生態系をもつガラパゴスだからこそ、携帯電話という別の分野で比ゆ的に使われているということであり、表現方法自体に悪意は感じていないようだ。
J-CASTニュースでは在日エクアドル大使館にも取材を申し込み、回答を待っている。