「iPodに補償金上乗せ検討」 朝日新聞記事は「誤報」?

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   デジタル機器をめぐる著作者への補償金についての議論で、思わぬところで「場外乱闘」が発生している。文化庁の検討会で「iPodの補償金上乗せを検討へ」と報じた朝日新聞の記事に対して文化庁の担当者が「事実と異なる」と指摘。会議を傍聴していた別の記者も「そういった議論や合意はなかった」と「援護射撃」したのだ。一方、朝日新聞は「問題はなかったと考えています」とコメントしている。

文化庁「正確に書いて欲しい」と伝える

「iPod補償金上乗せ」は「誤報」なのか
「iPod補償金上乗せ」は「誤報」なのか

   2008年1月17日に開かれた文化庁長官の諮問機関、文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」の第16回会合の内容をめぐって、問題の記事が掲載された。

   会議では、画質や音質の劣化なしに映像や音楽のコピーができるデジタル機器の価格に、著作権者への補償金を上乗せしている「補償金制度」の今後について検討。この日の会議では、文化庁側から「著作権保護技術の動向をみながら、補償金は順次縮小していく」との方向性が示された。

   ところが、この会議をめぐって、同日夕方、朝日新聞のウェブサイト「アサヒ・コム」に、「iPodに補償金上乗せ、検討へ 文化審小委員会」という見出しで

「iPodなどの携帯音楽プレーヤーや、次世代DVDを含めたハードディスク内蔵のDVDレコーダーの価格に『私的録音録画補償金』を上乗せすることを2月以降、検討することで合意した。補償金がかかれば、1台あたり数百円になるとみられる」

という記事が掲載されたのだ。ところが、この会議を傍聴していた記者から、

「こんな(朝日の記事に書いてあった)こと、決まりましたっけ?」

との問い合わせが文化庁に相次ぎ、小委員会を担当する川瀬真・著作物流通推進室長は、 「事実関係と異なる」などと、記事を執筆した記者に指摘。川瀬氏はJ-CASTニュースに対しても

「会議では、『各団体に持ち帰って検討してもらおう』ということにはなりましたが、『補償金上乗せを検討する』なんて合意はありません。朝日新聞の記者さんには、『あまりにも意訳しすぎているのではないか。正確に書いて欲しい』とお伝えしました」

とコメント。川瀬氏によると、この朝日新聞記者は会議を傍聴しており、指摘に対しては「デスクと相談します」などと答えたという。

「そういった議論や合意はなかった」と「ITmedia」

   同日夜になって、他のメディアも「援護射撃」を行った。IT業界を専門とするニュースサイト「ITmedia」が、

asahi.com『iPod課金検討』報道、文化庁『事実に反する』と抗議

との記事を掲載。「IT戦士」の名前でも知られる岡田有花記者が

「冒頭から最後まで傍聴した限りでは、この日の小委員会ではそういった議論や合意はなかった」

と書き、朝日新聞の報道が「誤報」との見方を示した。

   問題の記事は、遅くとも1月18日午前中の段階では削除されており、紙媒体(東京本社発行14版)にも掲載されていない。

   川瀬氏も記事が削除されたことを把握しており、

「『記事を削除』ということで、対応していただいたのでは」

と、事態は事実上解決済みとの認識を示している。

(08年1月18日20:30追記)

   朝日新聞社広報部は、J-CASTニュースの取材に対してファクスで回答し、

「文化庁の担当者からasahi.comの記事に対して指摘があったことは事実です。しかしこの記事は、音楽CDの録音機器などの補償金制度について対応を検討するとの記載がある文書『著作権保護技術と補償制度について』が、17日の著作権分科会の私的録音録画小委員会で大筋で了承されたことを踏まえて掲載したもので、問題はなかったと考えています」

と、あくまで記事の正当性を主張。asahi.comから記事が削除された理由と時刻についても尋ねたが、

「asahi.comから記事を削除したのは、編集上の都合です」

とのみ回答した。

姉妹サイト