土佐の学問所「名教館」のころからの幼なじみである広瀬佑一郎(中村蒼)が、十徳長屋に槙野万太郎(神木隆之介)を訪ねてきた。佑一郎がミシシッピ川の治水工事の技師としてアメリカに行くと聞いて、万太郎は明教館学頭・池田蘭光先生(寺脇康文)と3人で仁淀川へ行ったあの日に思いだした。
佑一郎の久しぶりの登場。逞しくなったのは姿だけではなく、これまでの実績と志まで立派にみえた。しかし、同郷人と話すと土佐弁になって、懐かしい昔話に花が咲くものだ。
「『虫けら』が日本を支えているんだ」
万太郎は東京大植物学教室の田邊教授(要潤)に「虫けら」呼ばわりされたことが去来して、消沈気味。このまま東大に残ることに意味あるのかと佑一郎に相談すると、その教授を土木現場に放り込んでやりたいと万太郎を励ました。視聴者までがスッキリである。
北海道開拓で苦労してきた佑一郎は、学校を出ただけで「先生」と呼ばれ、労働者はバカにされるという、あからさまな身分差別に辟易としている様子、「『虫けら』が日本を支えているんだ」と言った目が力強かった。
佑一郎が万太郎を励ましている場面では、<佑一郎は元来、心根のやさしい人><佑一郎君のアドバイスで光の道><博物館を訪ねてみろと助言する佑一郎。目から鱗じゃ!>などの声がSNSに集まった。 いつの間にか人格者のような佑一郎。没落した武家の子だけあって、万太郎とは性根が違う。官費で大学へ進み、志高く目線は低く保って大人になった。アメリカで活躍してさらにビッグになって無事帰国してほしいが。
二人が「行ってらっしゃい」「ああ、行ってくる」と抱き合うシーンの、貧乏長屋の向こうに広がる夕焼けがきれいだ。セットだけど、「らんまん」はこういうところも丁寧に作りこんでいる。(Y・U)