「どうする家康」マメ知識
秀吉の「真の姿」探る 時代で変わる人物像
<歴史好きYouTuberの視点>

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好人物?ダーク?

<尊皇攘夷と結び付けられた秀吉>

   江戸時代に、体制と庶民で既に評価が分かれていながらも人気だった秀吉が、さらにブームになったのは、幕末から戦前にかけての「尊皇攘夷思想」がきっかけでした。

   なぜ秀吉と尊皇攘夷?と思われるかもしれませんが、実はこの組み合わせはとても相性が良かったのです。それは、尊皇攘夷の元ともいえる南朝を推した「水戸学」が、足利を倒したことは「尊皇」であり、さらに朝鮮出兵をしたことは「攘夷」であるとして秀吉を推したからです。私たちと違い、朝鮮出兵は海外に日本の武力を見せつけたとして、当時の人たちには武勇伝として認識されていました。

   偶然としても、ここまで尊皇攘夷と相性が良かったのは、秀吉の「運の良さ」があるのかもしれませんね。

<私たちの持つ秀吉像>

   戦後では、緒形拳さん演じる秀吉の原作にもなった、吉川英治作『太閤記』が有名ですよね。

   しかしこの『太閤記』は、小牧・長久手の戦いまでしか書かれていません。それは、朝鮮出兵のところを書く前に日本が敗戦してしまったからでした。戦後の日本で朝鮮出兵の箇所を書くのは難しく、吉川英治さんはやむを得ず断念したのです。

   その後も、山岡荘八や司馬遼太郎が秀吉を何とか「良き人」として描こうとするも、現代で判明している史料上の秀吉と、「陽気で人たらし」という部分に矛盾が生じてしまったり...さらに「立身出世」したというのが事実として強く際立ってしまっています。

   竹中直人さん演じる『秀吉』は、皆に好かれる人物になりましたが、「織田信長の意思を引き継ぐ」という部分が推されたこの秀吉像は、一次史料からはわからない創作に近いものです。

   近年での「手段を選ばない」ダークな秀吉は、創作よりも事実として判明している部分を大切に書く風潮の結果なのですね。そうして、ムロツヨシさんの目が笑っていない秀吉が出来上がっていっているわけです...

   さて、今回の記事はここまで。

   ドラマに関するさらに詳しい解説は、是非YouTubeチャンネル・戦国BANASHIをご覧ください。それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ!

    (追記:参考文献など)今回の参考文献は、『戦国武将、虚像と実像』(呉座勇一著、角川新書)など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。

   <第23回『瀬名、覚醒』水野信元の往生際の悪さが最高。>は、(J-CAST)テレビウォッチのオリジナル記事下動画や、YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」からお楽しみください。


++ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2023年春には登録者数が15万人を超えた。22年12月には『家康日記』(エクシア出版)を公刊。

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