「ハケンの品格」など大ヒット作を手がけた櫨山裕子プロデューサーの冷静な目

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   私は日本テレビで約4年9か月、ドラマ制作部長、編成局長、制作局長として、連ドラの制作に関わっていました。

   ドラマ制作部長になったとき、企画の決定は、何人かの部員と協議して決めるという方式をとりました。最終的には編成局が判断するのですが、実質的にはドラマ制作部の決定が、日本テレビのドラマとなっていました。

   そのドラマ制作部のメンバーの1人に、櫨山(はぜやま)裕子プロデューサーという逸材がいました。今回の原稿では、彼女について紹介します。

  • 日本テレビ「ハケンの品格」公式サイトより
    日本テレビ「ハケンの品格」公式サイトより
  • 日本テレビ「ハケンの品格」公式サイトより

新しいことをやりたかったときに欠かせなかった櫨山の視点

   彼女のものの見方は、冷静で、優れていて、私も大変勉強になりました。彼女に最初に注目したのは、「(当時)ジャニーズ事務所からデビューしたばかりのKAT-TUNを、日本テレビのドラマの中心として盛り上げていこう」という提案をしたときです。

   これを聞いた私は、新しいことをやろうと思っていたこともあり、賛同して、2005年1月期の連ドラ「ごくせん」第2シリーズで、亀梨和也と赤西仁(当時、ジャニーズ事務所)を高校生のメンバーとして起用しました。熱血教師の"ヤンクミ"(仲間由紀恵)が大活躍するドラマで、大ヒットしました。

   次に注目した発言は、2005年7月期のドラマ「女王の教室」。小学校を舞台に強権的な態度で、クラスを支配する女性教師(天海祐希)に関してです。以前に本コラムでも紹介しましたが、この作品は、脚本遊川和彦、プロデューサー大平太によるもので、作品の中心となる主人公の女性教師の性格をどう考えるか、議論になりました。彼女の発言は「毎回毎回、こんなひどい教師がいる訳がなく、最終的には、その理由がわかった方が、感動的になる」というものでした。私は、この意見に賛同して、結果、放送された「女王の教室」も大ヒットしました。

   また、2005年の「野ブタ。をプロデュース」に関しても、いい提案をしてくれたのです。原作では、高校に転校してきた、さえない生徒(男性)を、同じクラスの男子高校生が人気者にプロデュースしていくストーリーです。櫨山は「転校生の性を女性にして、プロデュースする男子高校生を2人にしたらどうか」と提案。これに賛同した私は、亀梨和也(KAT-TUN)と、山下智久(当時、ジャニーズ事務所)を起用して、結果、皆さんもご存じの通り、大ヒットを収めました。

   櫨山裕子プロデューサーの代表作と言えば、2007年に放送された「ハケンの品格」です。この作品に対して私は、「こんな派遣社員は、いる訳はない」と思い、ドラマがヒットする要素があると判断しました。

   主人公(篠原涼子)は愛想がなく、正社員に媚びない派遣社員ですが、特Aランクの"スーパーハケン"で、この作品も大ヒットしました。

   私がドラマ制作に関わりを持った約4年9か月の間、櫨山プロデューサーの意見を聞いたことが多く、彼女に感謝しています。

   彼女は、ドラマのことを考えるときは、常に冷静に世相を見つめています。だからこそ、世の中のことがわかり、対比・類推等の切り口で、世の中のことを切っていくことができるのです。彼女が次々とヒット作を連発しているのもうなずけます。

   今回、櫨山のことを紹介したのは、彼女が優れたドラマプロデューサーであることを少しでも多くの人に知ってもらって、もっとたくさんの人に、ドラマを見てほしいと思ったからです。

渡辺弘(わたなべ ひろし)
渡辺 弘(わたなべ ひろし)
1952年生まれ。東京大経済学部卒業。1976年に日本テレビに入社し、制作局CP、ドラマ制作部長として番組づくりの現場で活躍。編成局長、制作局長、取締役報道局長、常務・専務を歴任した。「マジカル頭脳パワー!!」「THE夜もヒッパレ」「「スーパーJOCKEY」「24時間テレビ」などヒット番組をプロデュースした。 現在は「情報経営イノベーション専門職大学」客員教授。映像会社「2501」顧問。
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