NHK大河ドラマ「どうする家康」~長篠を救え~(2023年6月11日放送)。織田・徳川連合VS武田が長篠城の西の設楽原で対峙していた。信長(岡田准一)が長々と馬防柵を作る一方、家康(松本潤)は武田の背後から夜襲をしかける。これが引き金となり、勝頼(眞栄田郷敦)はわずかな勝機に賭けて攻撃を開始した。
3000丁の鉄砲が火を噴き、最強といわれた武田の騎馬軍団はバタバタと倒れる。火縄銃三段構えは薄めに描かれ、「銭のある者が勝つ」と表現された。長篠の戦いでいくさの歴史が変わったのだ。
武田の人海戦術とビクトリーを勝ち取る精神力は、日本一強靭であっただろうが、信長鉄砲隊の容赦のない大量殺戮に全く敵わない。信長の薄笑いも気色悪いが、凄惨な光景がサイレントで表現されたのは、ハリウッドの戦争映画を彷彿とさせ、凝視効果抜群であった。
家康と信康(細田佳央太)は眼下の皆殺しに声も出ない。この2人だけではなく、信長も含めて誰もが初めてみる光景。勝頼にしてもこんなにも悪魔的な連射は想像できなかっただろう。
妻・瀬名に忍び寄る陰謀
マツジュン家康の涙がフォーカスされる。凄惨ないくさへの恐れもあったかもしれないが、圧倒的な強さを示した織田信長にひれ伏すほかない絶望に泣けてきたのではなかろうか。
SNSでは「したくない戦さをしなくてはいけない 家康のギリギリの心を感じました」「殿の悲しさ、悔しさ、流した涙に心が痛みます」「片眼から涙を流す家康に悲壮さ滲み出ててた」など反響も。
涙を流したのは、家康だけではなく勝頼もだ。天下人にあと一歩だったのに、存続さえ危なくなった。信長は勝頼を「強敵」と認めていて、ここで潰さないと潰されると脅威を感じていたがゆえの作戦だった。勝機半分では「退く」という父・信玄の言葉を捨てて、数パーセントの奇跡を信じて攻めてきた勝頼に、自分と同じ匂いを感じたのかもしれない。
合戦も見ごたえあったが、信長はすでに警戒しているのか、ストーリーは家康の妻・瀬名の武田との内通疑惑へと続き、今後の悲劇がどのように展開されるのか。期待だ。(Y・U)