12日(2023年5月)に発売された米国の「TIME」は、その表紙で「岸田文雄首相は数十年にわたる平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」と報じた。政府の指摘をうけネット版の見出しを変更したが、16日の「モーニングショー」は記事の内容に踏み込んで解説した。
「PRIME MINISTER FUMIO KISHIDA WANTS TO ABANDON DECADES OF PACIFISM―AND MAKE HIS COUNTRY A TRUE MILITARY POWER」。発売に先立って10日、岸田首相の大きな顔写真とともにWEB版に上記の見出しが流れた。
WEB版見出しは変更
これに対し、政府は「標題と(記事の)中身に乖離がある」と指摘、「TIME」は11日にWEB版を次のように変更した。「岸田氏はかつて平和主義だった日本に、より積極的な国際舞台での役割を与えようとしている」。岸田首相も12日、「記事の中身と見出しがあまりにも違うのではないか」(中国新聞単独インタビュー)と反論した。紙面の見出しはそのままだった。
これについてコメンテーターの玉川徹は「記事を読むと、(元の)タイトルの方が記事の本音だろうな、と思いますよ」。
MCの羽鳥慎一が、TIME誌の記事を解説したところによれば、冒頭に、「日本の総理官邸(現公邸)は不気味な場所である」「石とレンガ造りの官邸は、1932年に海軍の若い将校が犬養毅総理を暗殺した時、まだ3年しかたっていなかった」。「首相は『先人たちからこの建物では幽霊に遭遇すると警告されてきた古い建物。幸いなことにまだ幽霊に遭遇したことはない』」。
さらに記事は、日本の現状を、ロシアとの領土問題、北朝鮮のミサイル、中国の台湾有事への懸念、といった憂慮すべき問題があり、これを背景として、岸田首相は「第二次世界大戦後、最大規模の軍備増強を発表」「世界3位の経済大国である日本を、それに見合うだけの軍事的存在感を持つ、グローバルパワーに戻すことに着手した」。「2027年までに防衛費がGDPの2%に引き上げられ、日本は世界第3位の防衛予算に」「核兵器のない世界を目指すという岸田首相の長年の公約と食い違うという見方もある」。
記事では、2017年にノーベル平和賞を受賞したサーロー節子さんの「岸田批判」も引用する。「岸田首相は核兵器のない世界を目指すことが最優先だと言っていたが、いま彼が私たちを欺いていたことを実感している」。記事は、次のように締めくくる。「岸田首相の広島での使命は、焼け跡と折り鶴に焦点を当てることである」「亡霊の声を聞くことである」。
玉川徹は、記事の冒頭と末尾に、「官(公)邸の幽霊」と「亡霊」の話を置いていることに注目。「岸田氏の広島での使命は、焼け跡と折り鶴に焦点を当てること、と言っているのは、被害にあった日本の国土と人々の意味。その被害者たちの声に耳を傾けるべきだと。記者は、最後の一文(亡霊の声を聞くこと)だけ。ここを主張したかったのだ」。
(栄)