岸田文雄首相が15日(2023年4月)に和歌山県の漁港で爆発物を投げられた事件以降、警備強化や選挙演説時などの聴衆との距離について様々な議論が起きている。一方で、15・16日のテレビ朝日の世論調査では内閣支持率は45.3%、前回より10.2ポイント跳ね上がった。17日の「モーニングショー」が特集した。
支持しないは34.6%(4.4ポイントダウン)だった。ただし、約8割が「政府の少子化対策で問題は改善しない」。「その財源で国民負担が増えることを支持しない」とする人が約6割。防衛増税についても55%が「支持しない」と答えた。
「回復基調にあったが...」
テレビ朝日官邸キャップの千々岩森生記者は、「2月以降(支持率は)回復基調にあったが、ここまで上がるとは。今度の事件の影響があった」。
事件前に、現場周辺の防犯カメラには、木村隆二容疑者に似た男が、現場に向かう様子が残されていた。岸田首相の車列の後を追いかけるように、漁港の方へ道路を渡る姿も確認されている。午前11時18分に、岸田首相は漁港に到着。その1分後に、容疑者らしい人物も到着した。その約7分後の11時26分。首相が聴衆に近づくと、これに合わせて聴衆の中に入ってくる容疑者のリュック姿が見える。そして、首相が聴衆に背を向けた瞬間。円筒状の爆発物が首相の背後に、低い弧を描いて落ちた。会場は騒然となった。首相は警護官に守られて避難。その52秒後、大きな爆発音が響き、白煙が上がった。聴衆は逃げ惑った。
首相は演説日程を続けた。事件から約5時間後の同日午後5時。JR新浦安駅前で行われた応援演説では、バリケードを設置。背後にも厳重な警護態勢が敷かれた。
事件から一夜明けた16日、岸田首相は首相公邸で、「民主主義の根幹をなす選挙において、こうした暴力的な行為が行われた。このことは絶対許すことはできないと考えています」。このなかで、街頭演説を続ける考えを強調。正午過ぎには、大分県別府駅前で、演説した。会場では、聴衆との間に柵やコーンが置かれ、制服警官らが数メートル間隔で立った。聴衆のバッグなどを開けて手荷物検査、金属探知機も使用された。選挙カーの上には、黒い盾のようなものも設置された。演説を終えた岸田首相は、聴衆に近づき、グータッチであいさつをした。周囲の警護官らから「グータッチでお願いします。両手を前に」。岸田首相も「ありがとうございました」「ハイ、じゃあ次。こっち行きます」。
和歌山県の事件で、威力業務妨害の疑いで逮捕されたのは、兵庫県川西市に住む無職、木村隆二容疑者(24)だ。銀色の筒状のものを投げ込んだ。現場からはもうひとつの銀色の筒状のものとライターが押収された。同容疑者のカバンから、刃渡り13センチの果物ナイフが見つかった。爆発で、警察官一人と、聴衆ひとりがけがをした。翌日16日未明の午前零時半には、和歌山市の現場から100キロ以上離れた、兵庫県川西市の木村容疑者の自宅に家宅捜索が入り、約8時間かけて鉄パイプや粉末が押収された。
(栄)