この作品は2019年制作のイギリス・アメリカの戦争映画で、2020年のアカデミー賞の作品賞にノミネートされ、撮影賞・視覚効果賞・録音賞を受賞しています。
監督はサム・メンデス(イギリス人)で、実話をまじえたフィクションです。(この原稿は、ネタバレを含みます)
時は1917年、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っ只中にありました。
イギリス陸軍は、航空偵察によってドイツ軍の後退を戦略的なものであり、連合国軍を誘引するための作戦であることを把握します。その情報を明朝に突撃予定のイギリスの連隊に、伝えようとします。しかし、情報を伝えるための電話線は切れてしまいました。
そこで、若い兵士ウィル(ジョージ・マッケイ)とトム(チャールズ・チャップマン)が、現地へ行って、連隊に作戦中止の情報を伝えるよう命じられます。
「明朝の攻撃を中止させろ。1600人の命がかかっている。命の限り急ぐんだ」
この連隊の中には、トムの兄ジョゼフもいました。敵陣の中を行かなくてはならない過酷な任務です。
「ワンカット」の優れたカメラワーク
この映画の凄いところは、2人の兵士が、命令を遂行するまでの全過程を、ほとんどカットを割らない、1カット撮りに見えるように撮影していることです。見る側も彼らと一緒に進んでいるような臨場感があります。
119分という長尺を、ほぼ1カットに見えるように撮るということは、想像を絶する量のリハーサルを積み重ねたもので、まさに、凄い映画なのです。アカデミー賞の撮影賞と視覚効果賞を受賞したのも、十分に納得できます。撮影監督は、ロジャー・ディーキンス(イギリス人)です。
トムは途中で戦死してしまうのですが、ウィルがなんとか命令を伝えました。ウィルに抱かれながらトムが息を引き取るとき、トムの顔面が(これも1カット撮りですが)次第に蒼白になってゆくのにも、驚きました。
この映画は、戦争の怖さ・悲惨さ、それに立ち向かう人間たちの必死さといったものを訴えている、優れた昨品です。