「4月1日から給与の支払い方に新たな選択肢が加わったんですね。スマートフォンの決済アプリなどで受け取る給与のデジタル払いといわれるものが解禁されたんです」と切り出す森圭介アナウンサー。今日4日(2023年4月)の「ZIP!TOPNEWS解説」では、新たに始まる給与デジタル払いのメリットと課題について専門家に話を聞いた。
給与デジタル払いとは、現在主流となっている銀行振込に加え、「◯◯Pay」などスマホ決済アプリで受け取ることが可能になるというもの。
キャッシュレス決済を増やす狙いも
街頭インタビューでは「私はデジタルの方が使いやすいかな」「自動販売機もネットで決済できる。お財布持たないで出かけても不安はない」など賛成の声が聞かれる一方で「支払いが全部銀行振込。反対せざるを得ないかな」「全額はちょっと怖い。エラー起きちゃったときに信用が現金ほどはないかな」などの声も。
社内の経費精算で送金アプリを導入している日本瓦斯では、会社のコスト削減などの効果を実感していることから、デジタル給与の導入も検討しているという。社員からは「数万円とかからまず始めてみたい」「今まではチャージしないといけなかったのが直接振り込まれる。手間がなくなるのが便利」と歓迎する声が。
なぜ今解禁か。それには日本のキャッシュレス比率が関係している。世界をみると韓国が90%、中国が80%、米国・カナダも50%以上という中で日本は32.5%に止まっており、政府は2025年までに40%、将来的には80%を目指すとしている。促進の理由は、インバウンド増加と金融機関のコスト低減だ。
渋谷和宏(経済ジャーナリスト)「政府は2030年までに外国人観光客を6000万人にしたいが、3割くらいしかキャッシュレス決済がない日本にくると不便を感じる。まずはキャッシュレス決済を日本で増やす」
森圭介アナウンサー「金融機関のコストというのは」
渋谷和宏「日本は現金決済の国なんですが、仕組みを維持するために年間2兆円くらいお金を使っている。銀行のATMは警備員や監視システムが必要で、現金輸送車でお金を運ぶ。1台に1カ月30万円くらいお金がかかっている。キャッシュレス決済で現金決済を維持するコストを減らしていく意図がある」
給与デジタル払いのメリットだが、利用者はチャージの手間が省けること。さらに利用の際にポイントが受け取れる可能性も出てくるという。
渋谷和宏「決済アプリの会社が給与振込口座を押さえると無敵。自分のところで押さえたい決済業者の競争が間違いなく起きる。どうやって給与口座を押さえるかというとポイント。『うちで作るとポイントを倍にする』など必ず起きる」
企業側にはイメージの向上や、振込手数料が安くなる可能性などのメリットがある。
渋谷和宏「企業が給与を振り込む時、一件300円くらい払っているが、スマホ決済業者は限りなくタダに近くなる。そうすると月給ではなく週給や都度払いができるようになる。月給という言葉がなくなるかもしれない。2日間働いたら2日分の給与をすぐ払うなど、デジタル払いは働き方を変えていく可能性もある」
山下健二郎(ダンサー、俳優)「ぼくもデジタルが多い。周りも結構増えてきた。手軽にポンポン使っちゃうからそこが心配」
決済業者の対応だが、昨日までにauPAY、楽天ペイ、PayPayが厚生労働省に申請。d払いは準備中、メルペイは前向きに検討。LINE Payは慎重に検討するとしている。
デジタル給与、実際に開始されるのは数カ月先とみられている。
(みっちゃん)