「芸術は長く、人生は短し(Ars longa,vita brevis)」
映画「戦場のメリークリスマス」の楽曲などを作曲した坂本龍一さん(71)が、(2023年)3月28日に死去した。がんを公表し、最後まで創作活動を続けた。亡くなる前日ころ、家族に「つらい、もう逝かせてくれ」。4月3日の「羽鳥慎一モーニングショー」がその足跡を辿った。
治療受けながら創作活動も
去年12月、ピアノ・ソロ・コンサートを世界に配信した。
インスタグラムでは、「2020年6月に癌であることが分かりましてですね、それ以来あまり表立った活動はしなくて、現在も治療を続けています。なので、かなり体力も落ちてしまって、1時間とか1時間半の通常のコンサートっていうのはもう難しいんですよね」。
数日間かけて1曲ずつ収録。「コンサート形式の映像を作って、みなさんに見ていただきますので、楽しんでいただければと思います」「それでは、エンジョイ!」。
坂本さんは2020年6月に見つかった癌の治療を受けながらも、体調の良い日は自宅内のスタジオで創作活動を続け、最期まで音楽とともにある日々でした。坂本さんの好んだ言葉として、「芸術は長く、人生は短し(Ars longa,vita brevis)」。所属事務所は伝える。
1952年東京生まれ。東京芸術大学在学中に活動を始め、78年に高橋幸宏さん、細野晴臣さんとYMOを結成。シンセサイザーなどを担当した。83年には「君に、胸キュン」の作曲の一部を手掛け大ヒット。テクノポップという新しいジャンルを展開。高橋さんが今年1月に死去した際、自身のツイッターに文章のないグレーの画像を投稿した。
83年の映画「戦場のメリークリスマス」では、大島渚監督から、俳優としてオファーを受けた。「音楽を任せてもらえるなら出演します」。監督から快諾を得た。
2017年秋には、こう話していた。「大島渚さんと仕事をしたのが、映画に関わるは生まれて初めてのこと。最初は役者として撮影をして、終わってから音楽を始めたんですけど。映画音楽もそれまでは、まったく作ったことがなくて、作り方も分からなくて。大島さんも何も言わないんですよ。まったく『ああしろこうしろ』ってことがなくて。一面、楽ではあるんですけれど、右も左も分からない素人にとっては、どこから初めていいかなって感じ」。
映画は英国アカデミー賞作曲賞を受賞した。88年日本公開の「ラストエンペラー」では、米国アカデミー賞作曲賞を日本人として初めて受賞。米国音楽界最高の栄誉であるグラミー賞も受賞、「世界の坂本龍一」となった。50歳の時、映画「リトル・ブッダ」のベルトリッチ監督から、「世界中を泣かせたいんだ。オレはティッシュペーパーの会社を始めるから。これ以上悲しいものはないという音楽を作って」と依頼され、33作目で「すごい悲しいのができた」と電話したら、それを聞きに来て「悲しすぎる」。5作目でOKが出た。
東日本大震災の翌4月(2011年)には(当時59歳)、「犠牲者への鎮魂」をテーマとするコンサートをニューヨークで開いた。2014年3月に中咽頭がんを公表した。療養に専念するため、コンサート活動などをいったん中止した。
(栄)