1867(慶応3)年3月のこと。土佐の佐川村の造り酒屋「峰屋」の跡取り息子である槙野万太郎(森優理斗)は5歳。草花を愛する心優しい男の子だ。
父親を生まれる前に亡くした万太郎は名目上の当主でもあったが、母・ヒサ(広末涼子)や祖母・タキ(松坂慶子)は、度々熱を出して寝込んでしまう病弱な万太郎をいつも心配していた。
その春のこと。酒職人たちの仕込み作業が終わる酒蔵では、祝宴の準備が進んでいた。
「白い花」との出会いも
ご馳走が並ぶこの日を楽しみにしていた万太郎は、大人たちの目を盗んで山椒餅2つをとると、友達の家に走った。しかしその途中、具合が悪くなってしまう。
部屋で寝ていた万太郎は、分家の豊治(菅原大吉)と紀平(清水伸)が、体が弱い自分のことについて「生まれて来ない方がよかった」と陰口をたたいているのを耳にしてしまう。
深く傷ついた万太郎は、病床についているヒサの部屋に行き、「なぜ自分を生んだのだ」と問い詰めると、家を飛び出してしまう。
万太郎が裏山の神社で神様に悪態をついていると、自らを「天狗」と名乗る武者が声を掛けてきた。
実はこの武者、坂本龍馬(ディーン・フジオカ)なのだが、万太郎は「天狗」の言葉を聞き、生きる希望を見出す。
「天狗」が去った後、万太郎を探していたヒサがやってくる。ヒサはそこに小さな白い花を見つけ、名も知らないその花が大好きだと万太郎に告げる。
疲れが出て寝込んでしまったヒサに、万太郎はその白い花の絵を描いて届けるのだった。
一方、万太郎を心配する祖母・タキは、番頭の息子・竹雄(井上涼太)に万太郎の目付け役を命じる。
そんな中、佐川領主である深尾家の家臣・塚田昭徳(榎木孝明)が槙野家を訪れ、万太郎に「名教館に通ってみてはどうか」と勧める。名教館とは、武士の子息だけが通学を許されている学問所だ。
そして秋。万太郎は竹雄に対する態度について姉・綾(太田結乃)に叱られ、酒蔵の中に逃げ込む。
万太郎を追ううちに酒蔵の中に入ってしまった綾は、杜氏の寅松(嶋尾康史)に激しく責め立てられる。「女子が酒蔵に入ると、酒が腐ってしまうという言い伝えがあるのだ」と。
そして年が明けたころ。ヒサの容態は悪化し、死期が近付いていた。万太郎はヒサのために以前見た白い花を探しに出るが見つからず、とうとう立ち入りが禁止されている奥山にまで足を踏み入れてしまう。
心配した綾と竹雄が、万太郎を探しに出るころ、雪が降り始めた。