トリンドル玲奈の抑えた演技も良かった 考えさせられることの多かった「今夜すきやきだよ」

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   冬ドラマが次々と最終回を迎えているが、なかには終わってしまうのが残念なドラマがある。3月25日未明(2023年)に最終回を迎えた「今夜すきやきだよ」(テレビ東京系)はそんなドラマだった。

  • テレビ東京の「今夜すきやきだよ」番組ツイッター(@txkonyasukiyaki)より
    テレビ東京の「今夜すきやきだよ」番組ツイッター(@txkonyasukiyaki)より
  • テレビ東京の「今夜すきやきだよ」番組ツイッター(@txkonyasukiyaki)より

特に大きな事件が起こるわけではないが...

   蓮佛美沙子演じる内装デザイナーで恋愛体質な「あいこ」と、トリンドル玲奈演じる絵本作家で他人に恋愛感情を抱かないアロマンティックな「ともこ」。仕事はできるが家事全般苦手な「あいこ」と家事は得意だけど仕事はスランプ状態の「ともこ」。そんな2人が高校の同級生の結婚式で再会し、やがて、共同生活を始めることに......。生活力のあるあいこが家賃を多めに出し、家事全般はともこが担当する、まさに理想の共同生活がスタートする。

   特に大きな事件が起こるわけではないが、2人の女性の恋愛観や仕事観、彼女たちが感じる日常生活の中で直面するジェンダーロールやセクシャリティにまつわる生きづらさや違和感のようなものを、丁寧に描き、考えさせられることの多いドラマだった。

   新しい彼・ゆき(鈴木仁)が出来て、おためしで暮らすことになり、部屋を出ていくことになったあいこに対して、複雑な感情のともこ。最後の夜食に、料理のできないあいこがともこのために握った不格好なおにぎりを食べながら、涙を流し、やっと「おめでとう」を言えた回は気がつけば、見ているこちらも涙が溢れてきた。

   蓮佛が上手いのはわかっていたが、意外!?といってはなんだが、トリンドル玲奈の抑えた演技が良かった。ゆき役の鈴木仁、ともこの友人しんた役の三河悠冴、ふたりの俳優もぴったりで、キャスティングが見事にハマっていた。こういうパートナーや友人が周りにいてくれれば、と思える理想的な男性像だった。

   いいドラマだったのに、さほど話題にならなかったのは、女性2人を軸にする内容だったからかもしれない。ドラマの視聴者は女性が多く、女性の悩みや生きづらさを描いたドラマは、自分たちの直面している現実を見せられているようで苦手だという人もいる。どうせ見るなら、現実の辛さを忘れさせてくれるようなものを、と。「チェリまほ」(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)や「美しい彼」のようなBLドラマ需要が高いのも同じ理由ではないか、と。BLドラマはファンタジーとして純粋に楽しめるから。

   そういうことから、こうしたドラマはあまり作られないが、せっかくのいいドラマが見られないのはもったいないので、いいものはいいと褒めたい。そして、できれば、何年後かのあいことともこもみてみたい。

(子守熊)

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