北海道の友夢牧場では乳牛約700頭を飼育しているが、搾ったばかりの大量の生乳を排水溝に流し、廃棄している。牧場では「1日2~3トン、金額にすると約31万円の生乳を捨てている状況」と嘆く。板倉朋希アナは「日本の生乳生産の半分以上を担う北海道の酪農家がかつてない危機にさらされています」と27日(2023年2月)の「モーニングショー」で伝えた。
資源価格の高騰や円安で、餌代が年間1億円上昇。エネルギー価格の高騰で、月130万円ほどだった電気代も今では200万円超。牧場では「もう企業努力では何もできない状態」と話す。
「牛乳だけじゃなく、このままじゃいけない」
さらに追い打ちをかけているのが、生乳の廃棄だ。コロナ禍で外食産業における生乳の需要が減少し、農協から生産抑制を求められているという。しかし、生乳は生きている牛からとれるもので、毎日搾乳が必要。簡単に生産抑制ができるものではない。それで、1日当たり3トンもの生乳を廃棄する事態になっているのだ。
北海道大学大学院の清水池義治准教授によると、これまでは、生乳が余った場合には脱脂粉乳を増産して対応してきたが、脱脂粉乳の在庫が過去最高水準まで増えすぎてしまい、そのしわ寄せを受けた酪農家が生乳を減産せざるを得ない状況に追い込まれているという。
酪農家は「このままいけば、いつまで持ちこたえられるか心配」と話す。
いったいなぜ、このような状況になってしまったのか。全国の生乳生産量の推移を見ると、2014年にバター不足が起きるほど生産量が減少していた。そこで農林水産省が酪農家に補助金を出して増産をはかり、生産量は増えていく。そこにコロナ禍がきて、外食産業の需要が激減。余った生乳を保存がきく脱脂粉乳などの加工品にしていたが、在庫が大量に積みあがってしまっているという。北海道の農協では今年度の生乳生産目標を5万トン減らすことを決定。農水省は生産抑制策として、乳牛の数を減らした場合には1頭当たり15万円を助成するとした。
気象予報士の石原良純は「かつては農水省主導で増産し、今度は農協が生産調整で、乳牛に死んでもらうという。今の食糧自給を考えると、北海道の食糧生産の現場を今、こういう扱いにしていいのか。資源がない国は資源を大事にしなきゃいけないのに、牛乳だけじゃなくこのままじゃいけない」と主張。
ニューヨーク州弁護士の山口真由は「余った牛乳をバターにするとかできるのに、バターは海外から輸入している。こういう政策の一貫性のなさに酪農家が振り回され、酪農自体を諦めざるを得なくなっているとしたら、大きな損失です」とコメント。
石原良純はさらに「生産を減らすため乳牛を殺処分、1頭15万円って、そんな話でいいのかっていう思い。現場で牛を育てている人がいて......、そんなことで僕らの食料の安全は保てるのか」と怒りを隠さない。
板倉アナが、余った乳製品を海外ではどうしているのかを報告。EUでは、価格が下落した乳製品を各国政府が買い取り、価格が高騰する市場に安くなったものを投入している。米国では、やはり政府が買い取り、生活困窮者に救助物資として配るなどしているという。
清水池准教授は「日本では、乳製品の価格に影響を与える可能性があるので、政府は需給調整に関与していない」と言う。
司会の羽鳥慎一は「困っている人もいるわけで、何とかできないのかなと思いますよ」とコメント。
板倉アナが「北海道の生乳生産量より輸入量のほうが多いんですよね」と伝えると、羽鳥は「おかしいですよね」とコメントした。
(バルバス)