世の中、理不尽なことが多過ぎる。正義が必ず勝つとも限らないし、むしろその逆のほうが多いのではないか。善良な市民は、踏みつけられても黙って泣き寝入りするしかない。そんな私たちの憂さを晴らしてくれるのが復讐モノ。昔は「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「必殺仕置人」といった時代劇が、その役割を担い、週に1度、悪人を懲らしめてくれていたが、その手のドラマもすっかり下火になってしまい、こちらのストレスは溜まる一方。
ラスボス探しの考察も
草なぎ剛主演「罠の戦争」(カンテレ、フジテレビ系)は、そんな私たちの鬱憤を晴らしてくれる格好のドラマだ。2015年1月期「銭の戦争」、17年1月期「嘘の戦争」に繋がる戦争シリーズの第3弾(23年1月期)。三部作に共通するテーマが『復讐』。今作で草なぎが演じるのは、政治家の第一秘書の鷲津亨。息子が瀕死の重傷を負わされたが、その事件のもみ消しを、長年尽くしてきた先生に指示され、一転。愛する家族のため、権力を振りかざす連中から、その力を奪い取るため、さまざまな罠を仕掛けて失脚させていくというもの。
たとえば前々回の第5話では、息子を突き落とした犯人を明らかにするために、正式に出馬を決めた鷲津の選挙戦を描き、嫌がらせやスパイ、そして、裏金をめぐる罠などにドキドキ。万事休すかと思ったところで、絶妙に切り抜けるのがいつものパターン。あの「半沢直樹」と同様のカタルシスが得られる。
すでに失脚してしまったが、鷲津が第一秘書を務めていた犬飼議員(本田博太郎)を筆頭に、与党・民政党鶴巻幹事長(岸部一徳)、内閣総理大臣竜崎始(髙橋克典)、厚生労働大臣鴨井ゆう子(片平なぎさ)と曲者揃い。誰が本当の敵なのかわからないのも、今作の見どころ。「一番、親身になってくれている(ようにみえる)鴨井大臣が実は怪しいのでは」、などと。ネットではラスボス探しの考察も飛び交い、新しいドラマの楽しみ方を提示する。
それにしても、普段は穏やかで冷静沈着な鷲津が、怒りをぶつける時の鬼気迫る演技に引き込まれる。草なぎ自身もこの7年の鬱憤を吐き出しているのかもしれない。
絶妙のタイミングで掛かる主題歌、香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」もいい。つよぽんの久しぶりの民放主演ドラマ復活を、歌で盛り上げる香取は声の友情出演といったところか。
(くろうさぎ)