私は、昨年12月の末に、日本映画「ラーゲリより愛を込めて」を見ました。(この原稿はネタバレを含んでいます)
この作品は、日本テレビ執行役員高橋利之君から「渡辺さん、いい映画だから是非見てください。二宮と安田顕がいいですよ」と推薦してもらい、映画館へ行かなくてはと、思ったのです。
映画の原作は辺見じゅん(故人)、脚本・林民夫、監督・瀬々敬久、主演は二宮和也です。舞台は、第二次世界大戦をまたいでいて、戦後もシベリアに抑留された、兵士達の姿を描いた実話です。
その抑留された兵士の一人が主人公の山本幡男(二宮和也)です。終戦後の1945年、彼らは零下40度の厳冬の地シベリアの強制収容所(ラーゲリ)にいます。戦争は終わったのに、わずかな食事しか与えられず、過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する、地獄の強制収容所(ラーゲリ)で山本は仲間たちを励まし続けます。
「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」
絶望する抑留者たちに希望の光を与えようと行動する山本でしたが、彼の体は病魔に冒されていきます。ラーゲリにいた、かつての上司、原幸彦(安田顕)は、彼に遺書を書くことを勧めます。
息を引き取る前に、彼は遺書を書き上げ、病床で一生を終えます。
帰りを待ちわびる妻に届いた夫の遺書
終戦から11年が経ち、日本で夫の帰国を信じ心待ちにしていた山本の妻・モミジ(北川景子)の家に、順番に収容所にいた仲間達が訪れます。文書を持っているとスパイと疑われるのでソビエト兵の追及を逃れるために、何と4通の遺書を分担して暗記していたのです。
最初に訪れたのは、遺書を書くことを勧めた原幸彦(安田顕)です。彼は「幸せでいることが、最低の条件だ」という山本(二宮和也)の言葉を伝えました。
次に訪れたのは松田研三(松坂桃李)で、彼は実母を亡くしたこともあり、しみじみと山本の母に遺した言葉を伝え、去って行きました。
そして、新谷健雄(中島健人)は、山本の4人の子供達に父親の言葉を伝えます。彼は教育を受けておらず読み書きができませんでしたが、山本の力添えで克服したのでした。
山本は、シベリアにいたとき、「シベリアの空も、日本の空もつながっている」と言って、自分自身と仲間を励ましていました。
最後にモミジのもとを訪れたのは相沢光男(桐谷健太)です。粗野な上官で、希望を捨てない山本の態度を嫌っていました。相沢は日本からの葉書で知った最愛の妻の死に、自暴自棄になり、雪の収容所でソビエト兵に撃たれて死のうとします。それを救ったのが、後を追って来た山本です。そこから感謝の念をもつようになった相沢はぶっきら棒なのですが、山本の言葉を伝えて帰りました。
私が、先ず感動したのは、4人の仲間が遺書を暗記して帰国するという所です。紙に書いたものを隠し持って、日本に帰るまで何度も何度も読んで暗記しようと努めます。
戦争の悲惨さの中で、最後まで希望を失わなかった山本(二宮和也)の前向きな姿勢には、頭が下がる想いがしました。
最後に新谷(中島健人)が、自分自身と仲間を励ますように言った「シベリアの空も、日本の空もつながっている」という言葉が、本当に心に染みる映画でした。