先日テレビで、映画「ドライブ・マイ・カー」を見ました。この作品は、2021年夏に公開され、2022年アカデミー国際長編映画賞を受賞した、濱口竜介監督作品です。
原作は村上春樹の同名の短編小説。映画好きの私としては、気になっていて見たいと思っていたのですが、ようやく見る機会を得たのです。3時間の大作で、期待以上の作品でした。(この原稿はネタバレを含みます)
主人公の家福悠介(西島秀俊)は、成功した俳優・舞台演出家で、妻と娘がいましたが、幼い頃娘を肺炎で亡くし、以後は二人で暮らしていました。しかし、脚本家をしていた妻の音(霧島れいか)が突然2年前に亡くなり、喪失感の日々を送っています。そんな悠介の再生を描いた実に見応えのある作品でした。
人に言えない思いを抱えた悠介とみさきに何があったのか?
悠介(西島秀俊)は、広島で行われる国際演劇祭へ呼ばれました。自ら愛車の赤い「サーブ900ターボ」を運転して、広島に到着した悠介は、事務局から事故によるトラブルを避けるため、専属ドライバーをつけさせてほしいという申し出を受けます。そのドライバーは渡利みさき(三浦透子)でした。悠介に対して何も詮索しようとしない無口なみさきに、好感を抱きます。
国際演劇祭は、チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」を数か国の俳優が演じる多言語劇。日本の俳優から、悠介(西島秀俊)は、高槻耕史(岡田将生)を主役に選びます。
高槻(岡田将生)は、亡くなった妻の音(霧島れいか)と不倫関係にあったのではと、悠介(西島秀俊)は疑いを持っているのですが。そんな高槻は、ある事件で警察に逮捕され、悠介は、高槻の代わりに主役を演じるか、演劇を中止するかという判断を迫られます。その猶予は2日間しかありません。
大きな衝撃を受けた悠介(西島秀俊)は、どこか落ち着いて考えられる場所を走ろうと提案するみさき(三浦透子)に、「君の育った場所を見せてほしい」と伝えます。
そして、2人は「サーブ900ターボ」で北海道へ向かいます。みさきの生家があった場所は雪に覆われていました。そこに降り立った悠介(西島秀俊)は、亡くなった妻に会いたいという想いを、改めて強く持つのです。人に言えない思いを秘めている、悠介とみさきを軸にした展開が面白いと思いました。
悠介の音に対する想いが、雪の北海道の原野に広がっていくように感じました。