2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は12月18日に最終回を迎えた。これまでの放送で、筆者にとってなんといっても印象的だったのは、ダントツで上総広常(佐藤浩市)の退場シーンである。
当時の鎌倉はといえば、木曽義仲(青木崇高)が後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もりはじめ、その一方で都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉洋)の失脚を企み、御家人たちが謀反を計画。北条義時(小栗旬)が反旗を沈めるため、上総広常(佐藤浩市)の協力を得て奔走し、ようやく謀反を沈めたのだ。
「最も頼りになる者は...」
ところが、である。再び謀反のないように謀反の首謀者を殺すことで、御家人に見せしめる必要があると頼朝。「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」と上総広常にロックオンしたのだ。なんで上総広常?と。ブエイと呼んで酒飲んで仲間だったんじゃないの?そう思ったのは当の本人で、広常は上機嫌ですごろくを楽しんでいる最中、刀を抜いた梶原景時にバッサリ。
ドラマに居て欲しい人、注目人物を盛り上げるだけ盛り上げておいて消し去るなんて...しかし、この出来事は、その後繰り広げられる源氏の血塗られた悲劇のトリガーだった。泣きながら駆け寄ろうとする北条義時と目が合った上総介。助けを求めながらも運命を受け入れたかのように微笑して絶命した。そして時は経ち、鎌倉殿の座を巡り突如刀を抜いた公暁を目の前にした源実朝が、短刀を捨て公暁に身を任せた瞬間にも哀しい微笑を見せた。ふたつの「微笑」には鎌倉の憂いを感じないではいられない。また北条義時がサタンのように変貌していく最初の惨劇だったこともあり、なんとも「へそ」のような小さいけれどドラマの礎のような出来事だったようにも思う。
上総介役の佐藤浩市さんの怪演にも見惚れてしまい、何度も再生して佐藤さんの一挙手一投足をじっくりと見た場面であった。「一連の演技が最高オブ最高だった上総介殿素晴らしかった」「佐藤浩市さんでなければ出来ない演技と言える印象的なシーンでした」「上総広常殿の怒りようも戸惑いや信じたくない気持ちが表情に出ているのが佐藤浩市の演技がうますぎる」など、この場面で当時のネットが沸いた。
三谷脚本ということもあって1年間実に見応えがあった鎌倉殿。現代的なセリフが人物像チャーミングに見せたり、場面を和ませたりしていたが、その一方惨劇がリアルで、鎌倉の血の歴史が、悲しいほど忌まわしく伝わったドラマだった。
(Y・U)