12月8日(2022年)放送「アメトーーク!」(テレビ朝日系)は「アントニオ猪木スゴイぞ芸人」だった。
体調不良で欠席の蛍原徹に代わり、土田晃之がMCを務め、その傍らには10月23日にプロレスデビューしたフワちゃんが陣取り、ひな壇にはくりぃむしちゅー有田哲平、ケンドーコバヤシ、勝俣州和、古坂大魔王、ますだおかだ増田英彦、ユリオカ超特Qら。各々、猪木に関連した衣装を身に着けて並んでいた。たとえば、えんじ色のアロハにジーンズ姿のケンドーコバヤシは、『元妻の倍賞美津子とのデートを撮影された時の猪木』であり、羽織袴の勝俣は『モハメド・アリ戦の調印式の際の猪木』というふうに。
名勝負の数々を熱くプレゼン
『伝説のジャーマンスープレックス』で猪木が勝利した「ストロング小林戦」、当時、「世紀の凡戦」と酷評されるも、後年その試合の真価が知られることになった「モハメド・アリ戦」、そして、北朝鮮に遠征し、38万人の観衆の前で繰り広げた「リック・フレアー戦」などをはじめ、名勝負の数々を熱くプレゼン。
のみならず、リング上で猪木が舌を出して失神し敗北した第1回IWGP大会の「ハルク・ホーガン戦」や、元々のアングルでは、途中乱入してきた謎の海賊男が、猪木に手錠をかけて試合を妨害するはずが、なぜか対戦相手にかけてしまいグダグダな結果となった「マサ斎藤戦」といった『迷』勝負も紹介。そのすべてにおいて出演者たちは、猪木に対する愛情とリスペクトたっぷりに、時に笑いも散りばめて熱く熱く語りまくっていた。
印象的だったのは、終始興味深そうに彼らの話に耳を傾け、猪木の試合VTRを食い入るように見つめるフワちゃんだった。自身もプロレスデビューし、実際に身をもって体験したことで、プロレスの楽しさ、厳しさ、奥深さを知ったフワちゃんにとって、猪木の雄姿は眩しく映ったに違いない。
猪木が美しいフォルムで卍固めをキメたVTRが流れると、有田から「やったんだぞ!フワちゃん」と声をかけられ、はにかんだ。フワちゃんがデビュー戦で披露した卍固めは、延髄斬りと並ぶ、猪木の代名詞的な超有名技。フワちゃんにも闘魂のDNAが受け継がれているのだ。
この日はあくまで、プロレスラーとしてのアントニオ猪木の偉大さを紹介するに留まり、政治家としての偉業や、晩年の病魔と闘う姿は一切、流れなかった。番組冒頭に、この企画は猪木が亡くなった10月1日以前に進んでいたことが明かされていた通り、「追悼」というよりも、猪木の強さ、カッコ良さをこころゆくまで堪能する回だった。
MCの土田から「1個1個のエピソードが長過ぎて、もうお時間です」と収録終了を告げられ、まだまだ語り足りない様子の面々。そりゃそうだ。猪木の魅力は到底1時間で語り尽くせるものじゃない。永六輔さんの言葉に「人間は二度死ぬ。一度目は肉体の死。二度目はみんなから忘れられた時」というのがある。アントニオ猪木はこうして語り継がれることで、私たちの中で永遠に生き続けることだろう。
(大熊猫)