岸田文雄首相が、防衛費を一気に増額し、その財源に法人税を軸に充てる方針を表明したことに、閣僚などから異論が相次ぐとともに、旧統一教会の被害者救済のための新法にも「これから課題が多い」と批判が出ている。岸田首相の危うい政策対応を、12日(2022年12月)の「THE TIME,」が特集した。
中期防衛力整備計画によると、防衛費は2014~18年度の5年間が24兆6700億円、19~23年度は27兆4700億円だったが、23~27年度は一気に増え40兆~43兆になる見通しだ。岸田首相は「防衛力を未来に向かって維持強化するための裏づけとなる財源、これは不可欠です」。財源確保のため、27年度には1兆円強の増税が必要と表明した。このうち6~7割程度を「法人税」で賄う案を検討しているとされる。
「救済新法」への不満も
これに対し、高市早苗・経済安全保障担当大臣はツイッターで「総理の真意が理解できません」「再来年以降の防衛費財源なら、景況を見ながらじっくり考える時間はあります」。さらに、自民党の佐藤正久・元外務副大臣は、「防衛力の中身を説明する前に、増税というのは順番が違う」と、11日の民放番組で、岸田首相の「増税方針」に苦言を呈した。
一方で、旧統一教会の被害者の「救済新法」が10日の参院本会議で可決成立した。新法では、霊感などで不安をあおる寄付勧誘行為や、個人に借金をさせたり自宅を売却して寄付金を調達するように要求することを禁止。行政の勧告、命令に従わなかった場合、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。
しかし、元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は、「最大の積み残し課題は、子どもの被害が、現実的には全く救済ができないということです」。新法では、「親の献金を扶養の子どもが取り消し、必要な範囲で養育費を取り戻せる」としているが、小川さんは「未成年者が法的行為をとる際には、親権者の同意が必要ですし、代理人が行うにしても、親権の喪失を申し立てる、非常に大きなハードルがまだまだあります」。
さらに、今回の新法は、おもに献金問題解決にしか焦点が当たっていないことも指摘。小川さんは、「宗教による被害はこれ(献金問題)がすべてでは全くございません。宗教2世の人権の侵害だったり信仰の強制の問題が残っていたり。今後も議論を続けてほしい」。
新法施行後「2年をめどに」規定を見直す、としている。
内閣支持率が落ちる一方の岸田首相だが、自民党内部からも批判、苦言が相次ぎ始め、二階俊博・元幹事長らの、菅前総理の再登板もにらんだ蠢(うごめ)きも出始めている。国政選挙が当分なく政権追い落としのリスクも少ない「黄金の3年間」と言われながら、不気味な震動が聞こえ始めた。
(栄)