NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」11月27日(2022年)放送回。京から大納言ら公卿を招き、鶴岡八幡宮で盛大に執り行われる源実朝(柿澤勇人)の右大臣拝賀式。泰時(坂口健太郎)らが警固する中、公暁(寛一郎)は木の陰に潜んでいた。(ネタバレあり)
今は無き八幡宮の大銀杏(2010年に強風で倒れ、現在はひこばえが成長している)こそ、公暁の怨念の混じる殺気を浴びたであろうし、実朝暗殺の全貌を知っていたのだ。
公暁と目が合った時に...
しんしんと雪が降るなか、大竹しのぶさん演じる巫女オババの「天命に逆らうな」という言葉が響く。占いが大当たりといえばそうなのだけど、オババの未来予想図が揃って、実朝にとってのXデーが来てしまった。
実朝が、オババの姿を見たときに、自ら「やはりその日」であると悟ったに違いない。だって後からさよならの歌も出てくるわけで。
公暁と目が合った時に短刀を懐から出して捨てた実朝。鎌倉の忌まわしい血縁に逆らうことはできないという自分の運命を受け入れることこそ鎌倉殿としての役割。公暁の煮えたぎる憎悪の刃さえも受け入れるほど抗うことなく死んでいく様は美しく愛に溢れていた。脚本も、舞台背景も、柿澤勇人さんの表情も視聴者の心を鷲掴みにした場面であった。
また公暁の怨念のエネルギーも最高潮なのが伝わる。公暁は実朝討伐の当事者ではあるが、闇の鎌倉で、身内でもある鎌倉殿を討つほかなかったという歴史の被害者でもある。公暁の雄叫びのなかで倒れる実朝なのだが、真骨頂は悲劇の主人公が実朝と公暁の2人であったことである。「密やかに穏やかに天命を受け入れた実朝くんも、生々しく器でないことを見せつけた公暁も、悲哀に満ちていて素晴らしかったです」「大河史に刻まれた実朝と公暁の物語に涙が止まらない」「実朝と公暁の悲劇、悲しいけど、雪の八幡宮の大階段、画が綺麗で映像化が嬉しい」などネットでも反応が相次いだ場面だった。
鎌倉殿亡き後、義時(小栗旬)と泰時(坂口健太郎)の確執が赤裸々に。まだ続く鎌倉の惨劇だが脚本も、演出も気になる。最後まで何もかも見逃せない。
(Y・U)