韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で156人が犠牲となった群衆圧死事故は、警察や行政が危険を放置する「不作為」があったとして、ついに韓国警察庁が警察署や区役所を家宅捜索しました。群衆の誘導もなく、危険を訴える通報にも対応しなかったとされます。週明け10月31日(2022年)からのワイドショーは連日、事故の続報を取り上げています。
警察の対応めぐる検証
(J-CAST)ワイドショー通信簿の「ソウルの転倒圧死事故 羽鳥慎一『倒れてと思ったら、立ったまま窒息』」(11月1日、テレビ朝日系「モーニングショー」)は、多くの人が立ったまま圧死したと伝えています。当時、大人4人-5人分の力が四方八方からかかったと考えられ、大阪工業大学の吉村英祐教授によると、270キロ以上の圧力がかかると約10秒で呼吸困難になるといいます。
「ソウル群衆事故 「THE TIME,」が伝えた遺失物センターからの情報」(2日、TBS系)は、事故当時の緊迫した通報と警察とのやりとりを取り上げました。「圧死しそうです。いま誰も統制していません」という通報に、「いま出動して確認してみます」と警察。「人が多くて圧死しています」との通報に、「圧死しているって?」と問い直すものもあったとあります。公開された通報は合わせて11件でしたが、このうち出動した記録は4件にとどまり、警察トップは現場の対応を謝罪しました。
「ソウル群衆事故と『警察への事前通報』内容 加藤浩次『もっと早く動いてほしかった』」(2日、日テレ系「スッキリ」)も同じく、発生前の通報を紹介。「4時間近く市民が叫んでも、(警察は)追加の措置を取らず惨事につながった」と韓国メディアが批判している、と伝えています。
「ソウル雑踏事故と『違法建築』 新事実わかるたびに『防げたのではと』」(2日、フジテレビ系「めざまし8」)は、現場周辺で違法建築が野放しにされていると指摘しました。通路に沿ったホテルでは、エアコンの室外機を隠す仕切りを設置。幅4メートル以上の確保が定められているのに、3.2メートルしかなかったとあります。
「イテウォン群衆事故、『ウサギ耳男』が犯人だとする歪んだ群集心理」(3日、「モーニングショー」)は、SNSでデマや誹謗中傷が飛び交い、根拠のない犯人探しが起きていると伝えています。「ウサギ耳の男」が「押せ押せ」と煽ったとされ、顔の画像が拡散。特定された人は「芸能人がなぜ自殺するのか分かる気がした」と困惑し、別の男性も「私は梨泰院に行っていません」と訴えているそうです。
衝撃的な事故や事件のあとは、確度のない情報が飛び交います。専門家が「特定の一つの原因で起きるのは極めて少ない」と指摘したと記事にあるように、いくつもの要素が絡んだと思われます。悲劇を繰り返さぬよう、詳細な検証と分析が待たれます。
(コムギ)