水田伸生監督の演出が光った「アイ・アム まきもと」

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   私は、最近映画館で、9月30日から公開されている映画「アイ・アム まきもと」を見ました。

   この映画は、2013年制作のイギリス・イタリア合作映画「おみおくりの作法」(監督ウベルト・パゾリーニ、イタリア人)を原作に描いた、ヒューマンドラマです。

   監督は水田伸生で、私と日本テレビで一緒だった彼の作品は、以前から注目して見ていました。今作の主演は阿部サダヲ、舞台は山形です。(この原稿は、ネタバレを含みます)

   牧本壮(阿部サダヲ)は市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬するたった一人の「おみおくり係」として真面目に働いています。

   「おみおくり係」の上司として、新任局長が来て、今の仕事が最後の仕事と、告げます。

   (中見出し)

  • 映画「アイ・アム まきもと」公式ツイッター(@iammakimoto_JP)より
    映画「アイ・アム まきもと」公式ツイッター(@iammakimoto_JP)より
  • 映画「アイ・アム まきもと」公式ツイッター(@iammakimoto_JP)より

阿部サダヲ、満島光、宮沢りえが好演

   牧本が最後にお見送りすることになった人は蕪木孝一郎(宇崎竜童)で、1人でも多くの人に見送ってほしくて、彼の人生を探ろうとします。いろいろなことを経て、港の居酒屋で蕪木と付き合っていた今江みはる(宮沢りえ)を見つけ、蕪木の自宅で発見した古いアルバムをたどって、娘の津森塔子(満島ひかり)に出会うのです。

   牧本(阿部サダヲ)は、自分が買ってあったお墓を、蕪木(宇崎竜童)のお墓にして、娘に鏑木の葬儀に来てもらう約束をとりつけます。

   牧本(阿部サダヲ)と仕事上のつきあいのある若い刑事、神代享(松下洸平)には、「早く遺体を引き取れ。警察は貸冷蔵庫ではない」と怒られてばかりです。

   蕪木(宇崎竜童)も津森(満島ひかり)も白鳥が好きなことに気づいた牧本(阿部サダオ)は、カメラを買って、横断歩道で白鳥の絵(幻想かも知れません)を撮ろうとして交通事故にあい、死亡してしまいます。

   牧本(阿部サダヲ)のものだったお墓で、蕪木(宇崎竜童)の弔いが行われ、友人、今江(宮沢りえ)と彼女の娘とその幼い子供、ホームレスの人達、炭鉱の人、津森(満島ひかり)が集まりました。彼らは、牧本が亡くなったことを知りません。蕪木の弔いが行われている、少し上の無縁仏のお墓に、牧本の遺骨を持った、神代(松下洸平)が雨の中、傘もささずに一人で遺骨を納めに来て、「牧本さん、あなたの粘り勝ちですよ」と、涙ぐみながら帰って行きます。

   すると、その無縁仏を弔うお墓に、蕪木(宇崎竜童)をはじめ、牧本が弔った多くの孤独死をした人たちがやって来て、牧本にお礼を言います。

   雨が上がって、上空に虹がかかり、俯瞰の絵で虹と、無縁仏を弔うお墓と、蕪木の弔いに参加した人達が帰っていく後ろ姿を、1カメでずっと見せていた、水田伸生監督の演出が素晴らしいと思いました。

   満島ひかりも好演していて、キラキラと輝いていましたし、宮沢りえも、落ち着いた魅力を発揮していました。

渡辺弘(わたなべ ひろし)
渡辺 弘(わたなべ ひろし)
1952年生まれ。東京大経済学部卒業。1976年に日本テレビに入社し、制作局CP、ドラマ制作部長として番組づくりの現場で活躍。編成局長、制作局長、取締役報道局長、常務・専務を歴任した。「マジカル頭脳パワー!!」「THE夜もヒッパレ」「「スーパーJOCKEY」「24時間テレビ」などヒット番組をプロデュースした。 現在は「情報経営イノベーション専門職大学」客員教授。映像会社「2501」顧問。
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