ロシアが8年前に併合したクリミア半島とロシアを結ぶ「クリミア大橋」が8日(2022年10月)爆破されたことについて、ロシアのプーチン大統領は9日、「ウクライナのテロ」との認識を示した。同大統領の「威信は失墜した」と言われ、ロシア軍が占領するヘルソン州への重要な補給路ともされるが、今後の戦況にどう影響するか。10日の「スッキリ」が特集した。
ウクライナ郵便、崩壊した橋をあしらった記念切手を発行
長さ19キロのクリミア橋を通行中のトラックが爆発し、並行した鉄路を走る貨物列車に引火、ロシア当局によると3人が死んだ、という。
プーチン大統領は、「ロシアの重要な民間インフラの破壊を目的にしたテロ行為であることは間違いない」「ウクライナの特殊部隊が発案し、実行を決め、命令したものだ」。
2014年、ロシアはウクライナ領だったクリミア半島を一方的に併合した。その後、国土の一体化を図るため、橋を架けた。2018年の開通当時、プーチン氏は式典で「いつの時代も、この橋を架けるのは皆さんの夢だったと思います。ようやく、みなさんの力や才能のおかげで、この奇跡が起きました」。自らトラックを運転し、先頭に立って橋を渡った。
筑波大の東野篤子教授は「ロシアにとってはクリミアをロシアの手に取り戻した象徴になるもの。ここが壊滅的なダメージを受けたとなると、プーチン大統領自体の威信にかかわってくる話だ」。ロシア当局によると、すでに同橋の運行は再開したという。プーチン氏は、橋などの警備強化を指示、原因を調べる政府委員会の設置を命じた。
ウクライナ側は、爆発に関与したとは直接言及していない。ゼレンスキー大統領は8日、「クリミアは曇っていたが暖かかった。ウクライナ人は何をすべきか知っているし、我々の未来が晴れであることも知っている」。また、ポドリャク大統領顧問も、「クリミア橋、これは始まりだ。ロシアに占領されたものは、すべて解放されなければならない」。
ウクライナメディアは、関係筋の話として、「爆発には、ウクライナ保安庁が関与」と報じた。同国内では、爆発した等身大の大きさのパネルを通りにおいて、記念撮影する国民も。ウクライナ郵便は、「プーチンテロリストに70歳の誕生日(7日)プレゼントとして」崩壊した橋とみられる場所に立つ男女の姿をあしらった、新しい切手を発行した。ウクライナの女性は「(爆発は)きのうのプーチンの誕生日に合わせればもっと良かった。素敵なプレゼントなのできっと喜んでくれる」。
東野教授は「爆破から、ロシア当局の発表まで時間があった。クリミアの爆破はいかにロシアにとって恥であるか、ということ。これまで厳重に警備されているからウクライナなんかに攻撃されないんだ、とロシア側は言ってきた。発表には迷ったと思う」
(栄)