まだまだ物語に絡んでくる可能性も？
牧の方の年齢は不詳ですが、『愚管抄』に時政の「ワカキ妻」と書かれていることや、子供たちの年齢から、時政よりも20歳以上年下だったのではと言われており、政子や阿波局（ドラマでは実衣）と同年代だった可能性が高いです。
時政が伊豆へ隠遁したときの年齢が68歳なので、この頃の牧の方は40代?50代と推測できます。
牧の方の性格に関して詳しいことはわかりませんが、『吾妻鏡』の中で、阿波局が「牧の方は信用できない」と政子に相談する場面があったり、畠山討伐に異議を唱えた義時を逆に非難したりしたことが書かれているため、おしとやかな女性ではなかったでしょう（笑）。
失脚後の牧の方は、歴史の表舞台からは姿を消します。しかし、事件から約20年後の嘉禄三年（1227年）に、時政の十三年忌の法事のため、京へ上洛したことが、『明月記』（藤原定家の日記）によりわかっています。
どうやら、牧の方は、鎌倉を去った後も、在京している娘や娘婿たちとは連絡を取り続けていたようです。
ドラマの中でりくは「私の中の火は消えていない」と義時に言っていましたが、もしかすると、まだまだ物語に絡んでくる可能性があるかもしれませんね。
鎌倉幕府を牛耳った「執権」の初代である時政は、豪傑・謀略家といったイメージが強かったと思うのですが、今回の『鎌倉殿の13人』では、若き妻・りくの存在によって人生が大きく変わった人物として描かれました。
これは、新たな時政像と言ってもいいかもしれません。
しかし、このような描き方も、記録上の牧の方を見ていれば、決してありえない話ではないのです。
記録上の人物たちを、どのような解釈で描くのか。歴史を知り、これまでのイメージとのギャップをドラマで感じるというのも、また一つの楽しみ方ではないでしょうか。
もし、ドラマで気になった人物がいたら、調べていくと面白い発見があるかもしれません。私の解説もその一助になれればと思っております。
さて、今回の記事はここまで。ドラマに関するさらに詳しい解説は、是非動画をご覧ください。それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ！
（追記：参考文献など）今回の参考文献は、『北条時政：頼朝の妻の父、近日の珍物か』（野口実著、ミネルヴァ日本評伝選）や『鎌倉幕府抗争史～御家人間抗争の二十七年～』（細川重男著、光文社新書）など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。
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＋＋ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2022年夏には登録者数が12万人を突破した。