司会の谷原章介が「ロシアのプーチン大統領が一部の国民の動員を発表したことを受け、国内に混乱が続いています」と切り出した。続けて、田中良幸リポーターが「隣国のジョージアとの国境付近では車の長い行列ができるなど、国外脱出の動きが広がっています」と伝えた。また召集令状を受け取った男性がバス乗り場で家族との別れを惜しむ場面が、ロシア各地で見られた。9月21日にプーチン大統領が部分的動員令に署名したためだ。
相次ぐ国外脱出や兵役逃れ
これに反発し、「わが子に命を」と訴える抗議デモがロシア39都市で相次ぎ、1300人以上が拘束された。参加者の多くは女性で「わが子を犠牲にしない」と叫んでいた。ロシア国内の著名人たちからも「ならずものの国家が国民生活を圧迫している」など疑問の声が上がり始めている。
また、ロシア国内の検索ワードにも異変が起きている。「ロシアから脱出する方法」「腕を折る方法」など兵役を回避する方法について、数多くの検索がなされている。国境付近では国外脱出の車で渋滞し、周辺国への航空チケットは軒並み売り切れているという。
ゲスト解説として出演した筑波大学の中村逸郎名誉教授は「これまでプーチン大統領は欧米を相手に軍事作戦を展開してきたのですが、今度はロシア国内でプーチンを敵にする市民が出てきている。これもプーチンの誤算になっています」と話す。
今回出された動員令は、兵士が足りていないのが原因。今回のウクライナ侵攻で、ロシア軍の死者数について、ロシア側は5937人と発表しているが、ウクライナの発表では5万5110人。プーチン大統領はこれまでも国営企業に兵士を集めるように指示を出してきたという報道もある。今回の予備役軍人が召集されることになるが、これは第二次世界大戦以降初めてのことだという。
そもそも予備役軍人とは軍務経験者で、有事の際の出兵の意志があると登録している人を指す。ロシアには徴兵制度があり、18~27歳の男性は期間1年で全員が軍務経験があるが、予備役に登録しているのは200万人ほど。この中には予備役に登録することが愛国心の表れととられるために就職に有利となるため、登録している人も多い。
谷原は「召集されないと思って登録している人が多いんでしょうね」とコメント。
中村教授は「特に若い人たちは召集されるという実感はないわけです。それで混乱が広がっているということです」と解説。
召集を拒否すると12年の禁固刑が科されるが、首相や報道官の息子たちでさえ「召集を望んでいない」という意思を示している。また政府高官の子息たちの多くは海外に住んでいるため、召集は免除されるという。
国外脱出を試みる人が急増しているのもこのためで、中には「万引きなどの軽犯罪で捕まり兵役を逃れる」「わざと骨折をする」「有給休暇を使って国外逃亡する」などの兵役逃れする事例があるほか、「パスポートなしで入国できる国」を紹介するメディアも出てきている。
「プーチンは核使用も示唆」
中村教授は「プーチンはそこまで追い詰められているということ。もともと欧米からの経済制裁は効いており、今回の部分的動員令で一気に不満が出てきたということ。私も友人にメールで尋ねたところ『自分の息子は大丈夫だ』と返事が来た。理由を聞くと『失業者だから、ならず者と思われているので、召集令状は来ない』と言っていた。こうして素人を戦場に送り込んでいることも、最前線でロシアの敗北が続いている理由だと思う」と話した。
フジテレビ解説委員の風間晋は「一部動員令を聞いて、プーチン大統領も追い込まれているなと思ったが、同時にひくに引けない状態になってもいるとも感じた。だから反発や逃亡があっても、その影響をいかに最低限にとどめるかのほうに考えが言っているのではないか」とコメント。
中村教授は「プーチンは核使用も示唆しており、私としては原発もそれに含まれるのではないかと懸念している」と訴えた。
谷原は「緊迫の度合いが増してきました」とまとめた。
(バルバス)