「鎌倉殿の13人」 比企能員、実は高貴な男!? 「坂東生まれじゃねぇ」を深掘り
<歴史好きYouTuberの視点【第31回 諦めの悪い男】>

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   NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の8月14日(2022年)放送回は「第31回 諦めの悪い男」でした。登録者数12万人を超える人気歴史解説動画「戦国BANASHI」を運営するミスター武士道が、「第31回」の解説動画で最も熱く語りたかった「ツボ」は?

   動画内容を軸に再解説します。次回放送をより楽しむための準備・復習にもお役立てください。(ネタバレあり)

  • 歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第31回」解説動画より
    歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第31回」解説動画より
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比企の乱めぐる『吾妻鏡』と『愚管抄』の違いとは

   いや~乱世乱世。どうも歴史好きYouTuberのミスター武士道です。

   鎌倉殿の13人第31回『諦めの悪い男』では、佐藤二朗さんの怪演光る比企能員の乱が描かれましたね。

   この比企の乱ですが、『吾妻鏡』と『愚管抄』では扱いが異なっているのが興味深い点です。

   まず『吾妻鏡』では、北条時政追討の画策を比企能員が頼家に密談、それを政子が盗み聞きして時政に伝え、時政が先手を打って、能員を誅殺したという政治劇になっています。

   しかし『愚管抄』では、能員の画策には触れられておらず、むしろ、実朝を擁立するために北条時政が起こしたクーデターのように語られています。

   『愚管抄』は天台座主などを務めた僧・慈円による歴史書ではありますが、必ずしも史実とは言い切れません。慈円は鎌倉で事件を直視したわけではありませんし、間違った情報が伝わっている可能性もあります。しかし、『吾妻鏡』も北条氏が編纂に関わっている以上、作為的な記述が無いとは言い切れません。比企の乱に関する記述を見るだけでも、歴史とは多面的なものであり、絶対の史実は無いということがよくわかりますね。

   ところで、今回のお話では北条時政が「坂東武者ってのはな、勝つためには何でもするんだ」と豪語し、比企能員を騙し討ちにしました。その際、能員に対して「お前さんは坂東生まれじゃねぇから分からねぇだろうが」と言い放っていましたね。比企能員の出自については、これまで作中でも言及されていなかったので私も少々驚きました。

   武蔵国比企郡を本拠とし、鎌倉幕府で絶大な権力を握った比企能員ですが、その生まれは四国・阿波国(現在の徳島県)だったと言われています。

   これは『愚管抄』の中に記されているもので、同音の安房国(現在の千葉県南部)の間違いではないかとも言われていますが、能員の養母である比企尼が、そもそも頼朝の乳母として在京していたこと(頼朝の流罪に従って比企へ下向した)、比企尼の長女・丹後内侍が二条天皇に仕えていたこと、約20年に渡り頼朝への仕送りを続けた資産家であったことなどから、比企一族は、京を中心に活動した貴族階級の出身だったのではないかという説が唱えられています。よって、比企能員が西国生まれだったとしても不自然なことではないのです。

   比企一族が、頼朝の経済的な最大の支援者であったにも関わらず、挙兵の際に大きな動きを見せなかったのは、作中のセリフのように北条とは「守るものが違った」からなのかもしれません。

   北条時政・義時によって徹底的に族滅に追いやられたため、比企一族の史料は非常に少ないです。しかし、埼玉県比企郡を中心に、ゆかりの地には様々な伝承があります。鎌倉殿の13人で比企に興味を持った方は、是非、ゆかりの地を巡ってみてはいかがでしょうか?私のチャンネルでもロケ動画を公開しておりますのでご覧になってくださいね(宣伝!)。

   さて、今回の記事はここまで。ドラマに関するさらに詳しい解説は、是非動画をご覧ください。それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ!

   【追記:参考文献など】今回の参考文献は、『鎌倉幕府抗争史~御家人間抗争の二十七年~』(細川重男著、光文社新書)、『北条時政』(野口実著、ミネルヴァ書房)など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。

   <第31回解説動画は、(J-CAST)テレビウォッチのオリジナル記事下動画や、YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」からお楽しみください>


++ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2022年夏には登録者数が12万人を突破した。

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