今年の夏の「大雨と猛暑」は、どこが異常なのか。どうやら、北極海の気温が急上昇したために偏西風が蛇行した結果、太平洋高気圧とチベット高気圧が「2枚重ねの布団」のようになって日本列島に覆いかぶさっているため、らしい。16日(2022年8月)の「モーニングショー」が特集した。
この夏の東京都心の猛暑日は15日となり、歴代最多を記録した。群馬県伊勢崎市では6月では観測史上初の40度を記録。世界でも記録的猛暑が続き、英国のテムズ川では水が枯れた。ドイツのライン川では水位が下がり、船の航行が困難になった。
2つの原因
きょうの予想最高気温は埼玉県鳩山町で40度、熊谷市と群馬県前橋市で39度。これまでにも、東京都心では過去最長の9日連続猛暑日となり、統計史上最多の1日6カ所で40度以上となった。どうして、こんなに暑いのか。
2つの原因がある。現象としては、太平洋高気圧(上空5000メートル)とチベット高気圧(上空1万5000メートル)が例年より北上し、日本列島の上で重なった。このため、日本は2枚の布団をかぶったような状態になった。三重大学大学院の立花義裕教授は、「高気圧は下降気流で、上にある空気をグーッと押し下げる。圧縮されてさらに熱くなる」。
その原因のひとつが「北極圏の温暖化による偏西風の蛇行」だ。北極圏では、他の地域の4倍の速さで温暖化が進行。北極圏の平均気温は今世紀末までに1985~2014年の平均を3.3~10度上回る予測だ。北極圏の温暖化が加速すると、赤道付近との温度差が以前より小さくなり、偏西風の流れが遅くなって、蛇行しやすい状況になるという。
偏西風は、日本列島の津軽海峡付近から北海道を横切るように北上、冷たいオホーツク海高気圧に跳ね返されてサハリン・シベリア方面に逆カーブ。さらに北上し大きく円を描いてカムチャッカ半島を南下して北太平洋を東へ流れる。立花教授は言う。「これだけ蛇行するのはなかなかない。高気圧が蛇行をさらに強めている」。
北海道や東北で大雨を降らせ続けている「線状降水帯」がちょうど偏西風の蛇行カーブに重なる。4日に山形県の最上川上流が氾濫、8日に北海道・函館市で観測史上最大の雨となり、9日には青森県の鰺ヶ沢町で浸水、13日に秋田県大館市で橋が崩落した。「通常の偏西風は北海道より北を通過するが、今年は蛇行。線状降水帯が広範囲に発生し激しさも増している」と立花教授は言う。
猛暑の、もうひとつの原因が「ラニーニャ現象」。南米沖の海水温が低くなる現象で、強い東風の原因となり、赤道付近のインド洋の海水温をさらに高くして、チベット高気圧を押し上げているという。
(栄)