「鎌倉殿の13人」 頼家の「井戸落ち」は史実?脚本? <歴史好きYouTuberの視点【第29回 ままならぬ玉】>

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   NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の7月31日(2022年)放送回は「第29回 ままならぬ玉」でした。登録者数11万人を超える人気歴史解説動画「戦国BANASHI」を運営するミスター武士道が、「第29回」の解説動画で最も熱く語りたかった「ツボ」は?

    動画内容を軸に再解説します。次回放送をより楽しむための準備・復習にもお役立てください。(ネタバレあり)

  • 歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第29回」解説動画より
    歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第29回」解説動画より
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『吾妻鏡』が記録したこと

   いや~乱世乱世。どうも歴史好きYouTuberのミスター武士道です。

   鎌倉殿の13人第29回『ままならぬ玉』では、三浦義澄、安達盛長などの宿老が欠けていくなかで、2代目将軍・源頼家のささやかな成長が描かれていました。

   梶原景時に続き、三浦義澄、安達盛長といった頼朝時代からの宿老を失った鎌倉幕府。頼家は「好きにやらせてもらう」と言い、図面に適当に線を引いて訴訟を裁定するなどの暴走を始めます(この図面に線を引く裁定は『吾妻鏡』にも記されている有名なエピソードです)。

   御家人を信用せず独裁を強化しようとした頼家ですが、妻・せつ(若狭局)の想いや、義時からの「御父上を超えたいのなら、人を信じるところから始めてはいかがでしょう?」という言葉を受け、成長の兆しを見せていました。

   そして、蹴鞠に逃げるのをやめると宣言し、側近で蹴鞠の指南役を務めていた平知康にお役御免を命じました。驚いた知康は、頼家から突如投げ渡された鞠を受け取ろうとしてバランスを崩し、近くの古井戸へ落ちてしまいました。

   さらに、知康を救おうとした頼家まで井戸に落ちてしまい、頼家を呪詛するために近くをうろついていた全成までがその救出に参加するという展開になりました。

   この一件、脚本家の三谷幸喜氏が得意とするドタバタコメディかと思いきや、井戸落ち騒動自体は、なんと『吾妻鏡』にも記録されている出来事なのです。

   建仁2年(1202)12月19日条、頼家は鷹狩りの狩場を視察した帰りに平知康をお供として連れていました。それが途中で馬が暴れてしまい、振り落とされた知康は運悪く、そのまま古井戸に落ちてしまったというのです。

   救出劇の詳細は明らかではありませんが、助かった知康は御所に帰ったあと、お供の褒美として小袖20着を与えられたと記されています。

   ところで、この古井戸落下エピソード、吾妻鏡の中では「落馬し、井戸に落ちた」ことに対する主語が書かれておらず、井戸に落ちたのは頼家だったのではないか?という見解もあるようです。しかし、征夷大将軍である頼家が落馬をしたとあれば一大事であり、こんなにあっさりした記述で終わるはずはありません。とくに吾妻鏡は、ことあるごとに頼家をディスる傾向にありますから、そんなことがあれば「将軍ともあろう御方が落馬するとは情けない!」とここぞとばかりに書き連ねていたはずです(笑)

   そういった点から、やはり井戸に落ちたのは平知康であったとみるべきでしょう。

   いずれにせよ、吾妻鏡の中でも取り上げられることの少ないこんな小さなエピソードを拾い、得意のコメディに昇華させる手腕はさすがとしか言いようがありません。

   さらに詳しい解説は、是非動画をご覧ください。

   それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ!

   (追記:参考文献など)今回の参考文献は、『源氏将軍断絶 なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか』(坂井孝一著、PHP新書)、『吾妻鏡事典』(東京堂出版)など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。

   <第29回解説動画は、記事下動画や、YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」からお楽しみください>


++ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2022年春には登録者数が11万人を突破した。

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