森圭介アナがリンゴとミカンの小売価格の推移を示す折れ線グラフ(総務省統計局)を示して「リンゴやミカンの小売価格は1964年から右肩上がりになっていますが、バナナは横ばい。1964年は228円でしたが、2021年は248円で、物価の優等生と言われています。しかし、6月8日(2022年)、フィリピン政府がバナナの値上げをお願いする会見を開きました」と9日の「スッキリ」で紹介した。日本の輸入バナナの8割を占めるのがフィリピンで、同政府は「生産者利益が出ていない。コストが上がって利益が下がっている」と訴えたのだ。
価格の「歴史」
番組ではバナナの歴史を振り返った。バナナが本格的に入ってきたのは1903年(明治36年)で、台湾からだった。昭和の初期ごろは、バナナは庶民に手ごろな値段だったが、太平洋戦争終戦後に台湾産バナナは日本に進駐していた米国軍に流れ市場への流通量が大きく減り、平均月収が1万円にも満たない時代に、2~3本で800円もする高級品になった。1963年、大卒初任給が1万5000円、掛けそば1杯40円の時代には1房100円だった。この年にバナナ輸入が自由化され、フィリピン産バナナが大量に輸入され始めた。当時年間約25万5000トンだった輸入量は、現在約4倍の約111万トン。大卒初任給は約15倍に上がったが、バナナの価格はほとんど変わっていない。
日本バナナ輸入組合の明石英次事務局長は、価格安定の理由を3つ挙げた。第1の理由は「長期契約」で、フィリピン産バナナを安定的に確保するため、商社などが複数の農家と長期契約を結び、契約期間中は安定価格で輸入できる仕組みを築いたこと。理由その2は「効率化」で、輸送の船を大型化し、冷蔵設備を改善することで、バナナのいたみを少なくしたこと。その3は「ロス率を減らすこと」で、できるだけ港に近いところに工場を作り、温度管理も売り場で行っていること。こうした取り組みによって、バナナの価格は安定を保ってきたが、フィリピン政府はこうした努力も限界に来たというのだ。原因はコロナやウクライナ情勢によるコスト高だ。生産者は「生産量は減っているが、燃料コストは上がり、肥料も値上げされている。これでは値上げ交渉をせざるを得ない」と訴えた。
司会の加藤浩次は「そうなんだぁ、これは大変ですね」と驚いた様子。
経営コンサルタントの坂口孝則は「想像ですが、フィリピン政府は小売価格ではなく卸売価格を変えたかったのではないかと思います。しかし、圧力をかけるとカルテルになる可能性があるので、それを避けるためにお願いという形で理解を求めたのではないか。1つ注意してほしいのは『価格が安定している』のではなく、物価は上がっているので実質的には値下がりしているということです。SDGsもあるので労働者の環境を守る必要はあり、個人的には値上げを受け入れるタイミングにあるのではないかと思います」と指摘した。
加藤も「僕もそう思います」と同意した。
(バルバス)