生放送の歌番組「うたコン」(NHK総合)。コロナ禍で無観客も続いていたが、この日は東京国際フォーラムからの生放送で、劇場が立ち並ぶ、有楽町・日比谷・銀座界隈を<日本のブルードウエイ>と呼び、かつてあった日劇ウエスタンカーニバルのVTRを流すなど、当時を知るひとには懐かしく、知らない人には驚きの、観客の熱狂ぶりを見せていた。
当時を知らなくても「懐かしい」映像も
この日(5月17日、2022年)の目玉は、「堺正章×井上順 伝説のコンビそろい踏み」ということで、ザ・スパイダース時代の話題で盛り上がっていた。堺いわく、「スパイダースの人気の9割は井上順さんの人気」と堺。「僕がメインで歌っているのにお客さんがみんな順さんを見てる」と。
それを裏付ける20代当時の2人が歌う映像は、井上はもちろんだか、堺もカッコ良かった。トークで散々盛り上げて、仲良くスパイダースのヒット曲「あの時君は若かった」を歌い、歌い終わったあと、「60年近い付き合いですよ。嬉しいなあ」(堺)などと言いながら、舞台から袖にはけるまで笑いをとっていた。
続いて、布施明が登場。こちらは、植木等が歌った銀座が舞台の名曲「銀座イエスタディ」を熱唱。「日本語、言葉は大切に歌わなきゃいけない」というのを植木から教えられたと貴重なエピソードを披露。歌唱中の銀座のモノクロ映像は、当時を知らなくても懐かしく感じるものだった。
ラストは布施の「マイ・ウェイ」。『発表から50年、魂の熱唱』との紹介どおりの熱唱ぶりにさすが布施明の喉は衰えていないなあと感心したが、あとで調べてみたら、堺と井上が75歳で、布施は74歳とたった1つしか違わない、ほぼ同年代で、これにはびっくり。
もっともトークの面白さでは堺&井上にはかなわないわけで、笑いの腕を磨いてきた堺&井上と、歌の腕を磨いてきた布施、どちらもプロフェッショナルの芸には違いない。いいものを見せてもらった。
ほかには、ミュージカル界から井上芳雄、明日海りおも出演。そうなってくると、大原櫻子とAKB48は余計か。いちおう、「ミュージカルにも出演する」大原とか、「銀座から近い秋葉原に劇場を持つ」AKBとか、理由づけしていたが......。若い視聴者を釣るための保険などせず、テーマに絞ったキャスティングを希望。
(大熊猫)