新型コロナウイルスへの国内感染を認めたばかりの北朝鮮では、国営テレビの緊急放送で「消毒」などを訴えたが、医療部門の幹部を叱責する金正恩総書記の手にはタバコが持たれたまま。チグハグな対応ぶりを、17日(2022年5月)の「THE TIME,」が伝えた。
MCの安住紳一郎が切り出した。「きのう(16日)の朝9時ころなんですが、朝鮮中央テレビの放送です。突如大きなテロップが画面中央に出てきます。『非常防疫大戦』という物々しいタイトルで始まりました」。番組では、コロナの治療法などが紹介された。
「発熱した場合の薬の飲み方」など説明
通常なら午後3時から始まるテレビ放送が、この日は午前9時からスタート。一日に何度も、新型コロナの特別番組を放送した。ピンク色の薬を持った女性が、発熱した場合の薬の飲み方を説明。薬の過剰摂取により、死亡したケースも少なくないそうだ。アニメを使って、「会話する場合は1メートル以上離れよう」「部屋をアルコールで消毒し、ヨモギを燃やし換気もしました」「生姜湯や白湯を飲み、マスクをして塩水でうがいを続けたら、すっかり治りました」とする、一般の人へのインタビュー映像もあった。
今月12日に初めてコロナ感染を発表した北朝鮮当局の16日の発表では、発熱者は累計120万人以上、死者は同50人以上、とされた。会議では、金正恩・総書記が、「医薬品が住民に正確に行き届いていない」「医療品が薬局通じて住民に行き届いていない」と保険医療部門など関係部門を叱責。軍医の投入を決めた。
一方で、放送では「たばこは新型コロナ感染の悪化をもたらすため、禁煙しなければなりません」と訴えたのに、金総書記自身は会議で、マスクをせず、手にはタバコを持ったまま。その前には、マスクをしてメモをする幹部たちの姿があった。
これまで「感染者ゼロ」を主張していた北朝鮮がなぜ? 感染拡大の公表や新型コロナの特番をやり始めたのか。
共同通信の元平壌支局長の磐村和哉氏は、「中国やロシアへの支援を要請するのではないか、と思われます。もう中国からは医療人が十数人規模で平壌に入っているという情報もあります」。北朝鮮では、PCR検査が不足し、ワクチンもない、とされる。岩村氏は、「北朝鮮の医療体制というのは、基本的に予防に重きが置かれています。実際にかかった場合にどうするか、という対処方法については非常に貧弱で、薬の絶対量も足りないし、重症化してしまったら死ぬのを待つしかない、という状況かも知れません」。
(栄)